川崎と琉球に1勝1敗「半信半疑だったところから、自信を持てるチームになろうとしているところです」
11月4日と5日、大阪エヴェッサはホームで琉球ゴールデンキングスを迎え撃った。初戦はタフな守備からトランジションに持ち込み、素早いボールムーブから高確率でシュートを決める見事なチームバスケットボールで81-76と勝利。しかし、第2戦は、序盤から琉球のインサイドアタックを止めることができず。立ち上がりで出遅れると、挽回できずに今シーズン最多失点の76-94で敗れた。
5日の試合終了後、大阪のチームリーダーである竹内譲次は次のように敗因を語った。「ディフェンスの部分で、ドライブでゴール下に侵入されてからキックアウトなど対応が後手になってしまいました。その中でズレを作られた3ポイントシュートを成功率44%(27本中12本成功)と効果的に決められたと感じています」
今オフ、大阪は絶対的エースだったDJ・ニュービル、帰化枠のアイラ・ブラウンと2人の中心メンバーが揃って移籍。さらにブラウンの穴埋めができず、B1で唯一帰化枠、アジア枠の選手不在で開幕を迎えたことを不安視する声も少なくなった。しかし、就任2年目となるマティアス・フィッシャーヘッドコーチの戦術が着実に浸透すると、Bリーグ初年度の新顔では一番のインパクトを与えているアンジェロ・カロイアロの活躍もあり、開幕7連勝の好スタートをきった。
一方で7連勝した相手は、いずれもスタートダッシュに失敗しリーグ下位に位置するチームであり、大阪が成績どおりの強さを持っているかについては不透明な部分もあった。だが、前節の川崎ブレイブサンダース戦から続いた強豪対決をそれぞれ1勝1敗で乗り切った。現在9勝2敗の好成績について、竹内はこう見ている。
「7勝0敗のスタートについて、『相手が…』と言われているのは知っていました。その中で満足しているわけではないですが、川崎に1勝1敗。琉球にも昨日は勝つことができて、チーム全員が(7連勝当時の)自分たちに対して半信半疑だったところから、自信を持てるチームになろうとしているところです。ただ、(終盤、一気に追い上げられた)昨日のクロージングや今日のようなゲーム内容は、改善しなければいけない。チームとしてもっと共通意識を持って課題に取り組まないといけないです」
スタッツに出ないプレーで開幕ダッシュに貢献「自分自身がやるべきことをやり続けるだけです」
大阪のスタートダッシュ成功には、竹内のスタッツに出ない貢献も大きい。帰化枠、アジア枠がいない不利を大阪がカバーできているのは、百戦錬磨のビッグマンである竹内がしっかりつなぎの仕事をこなしているからこそだ。
ここまで出場したすべての試合で先発を務め、平均で約20分のプレータイムを得ている竹内は、大阪加入3年目で最も多くの出場機会をつかんでいる。しかし、本人は「何か変わったことをしようというのは特になくて、自分自身がやるべきことをやり続けるだけです。結果としてありがたいことに去年よりプレータイムをもらっています」と、これまでと変化はないと語る。
さらに「正直、運もあったのかと思います」と謙虚だ。「開幕節の相手である富山がビッグラインナップを敷いてくるチームで、それにアジャストする必要があった。また、開幕前に体調不良者が出たりしたこともあって、自分がスタートでコートに立つことになったと思っています」
こう竹内は謙遜するが、このチャンスでしっかり結果を出したからこそ竹内は先発の座をキープしている。それは、10月21日、22日の茨城ロボッツ戦を体調不良で欠場した後も引き続き先発を務めていることが示している。
また、竹内の貢献度の高さは、コートの中だけに留まらない。アルバルク東京時代にはリーグ連覇を主力として達成するなど、今の大阪のメンバーでは竹内以上に勝つためには何が必要なのか、実体験としてわかっている選手はいない。チームに勝者の文化を浸透させるため、自ら積極的に発信していくことを意識している。
「そういったことをチームに伝えていくのは、自分にとって大事な1つの役割だと思っています」と竹内は語り、勝ったとはいえ残り1分で10点リードの大差から、自分たちのミスによって追いつかれる寸前までいった初戦の後、選手たちだけのミーティングを開いたと明かす。
「(初戦の)ゲームクロージングの時、ベンチから見ていましたが、納得のいく形ではなかったです。強いチーム、勝ち続けていくチームは、あそこまで追い上げられる終わり方にならないと思います。危機感とまではいかなくても、もっと成長しなければいけない気持ちになりました。だから、試合後に選手だけでミーティングを開き、自分が思っていることを伝えました」
「自分が発言することで他の若い選手たちも言いやすくなりますし、関係がぎくしゃくすることはないです」
このように竹内は、強豪へとステップアップするには勝てば満足するのではなく、内容も追い求めることの大切さを浸透させようとしている。また、チーム最年長だからこそ、時には厳しいことを言い合える雰囲気作りも自身のやるべきことと考える。
「自分の持つ言葉の影響力がどれだけあるのかはわからないですが、自分が発言することで他の若い選手たちも言いやすくなります。そして、自分が強いことを言ったところで、ずっと一緒にいるチームメートと関係がぎくしゃくすることはないです。今、自分たちに自信を持ち始めてきているからこそ、もう1歩、2歩と上に登るために、自分たちがどうあるべきなのか、共通意識をもっと強くもってシーズンを戦い抜かないといけない。それがレギュラーシーズン60試合終わった時の順位に出てくると思います」
今の竹内は、Bリーグで最も貢献度の高い日本人ビッグマンと言える。ともにNBL時代からトップリーグで長らく活躍したニック・ファジーカス、桜井良太、朝山正悟らが今シーズンでの引退を発表しているが、「あまり終わり方は考えていないです」と、自然体でプレーしている。
「1月で39歳になりますし、いくら自分がやりたくてもオファーがなければやれないです。もし、今シーズン終了後に、そうなってしまったら仕方がない。そういう楽観的な考えもあり、自分に変なプレッシャーをかけずにプレーできていると思います」
最後になるが、5日の試合は6038人の観客が詰めかけた。「6000人は僕が大阪に来てから多分、一番の数字だと思います。フロントスタッフはじめ、チーム関係者の皆さんが動員を頑張ってくれた感謝がまず1つ。そしてファンの皆さんが、自分たちに興味を持って試合を見にくれたことはすごくうれしいです」
こう喜びを語る竹内だが、だからこそ勝利を届けられなかったことを悔い、1カ月後の12月6日に再びホームで行われる琉球との再戦で雪辱を誓う。「ただ、今日こういう試合をしてしまったので、そこに対しては申し訳ない気持ちがあります。琉球とまた大阪で1試合あります。そこで今日やられたことをやり返す気持ちでまた戦いたいなと思います」
アップテンポな展開、アリウープなどの豪快なプレーに加え、3ポイントシュートも積極的に放つ大阪のプレーは、バスケットボール初心者でも盛り上がりやすいエンターテイメント要素の高いものだ。そこに勝利の感動も加えることができれば、リピーターは確実に増えていくだろう。そして強さと楽しさを備えたチームになるためには、妥協せず自分たちのやるべきことを貫ける厳しさが欠かせない。竹内はコート内外でそれを実践できる貴重な人物であり、大阪が強豪へとステップアップするには不可欠な存在だ。