「ミスをしても守り切ればいい」と守備に自信
栃木ブレックスは週末に行われた川崎ブレイブサンダース戦に連勝し、東地区1位の千葉ジェッツの背中をピッタリとマークしている。
「栃木さんは勝負どころが分かっている」と、対戦相手の北卓也ヘッドコーチに言わしめたように、第1戦ではラスト3分半を14-4、第2戦ではラスト4分間で13-2と、終盤の勝負強さが光った連夜の逆転勝利だった。
堅守の栃木を体現するエースキラーの遠藤祐亮は、こうした終盤の勝負強さをこのように分析する。「いつもそうですけど、慌てる人は誰もいません。ミスをしても守り切ればいいと気負いもないです。1点でも勝っていればいいという意思疎通があって、みんな積極的に行っていたし、構えないというのが良かったと思います」
終盤になればなるほど、一つのミスが試合の勝敗を左右する。そのため安全策を取り、積極性を失う傾向は強いチームにも出てくる。「ミスをしても守り切ればいい」と遠藤は言うが、言うは易しであり、そのメンタルを勝負どころで体現することは至難の業だ。それでも、ここまで言い切れるのは、「全員がディフェンスに自信を持っていて、チームとして集中していれば守り切れるという自信もあります」と語るように、自信があることに加え、それをチームで共有できているからだ。
それでも一例として、天皇杯決勝で千葉ジェッツの富樫勇樹に決勝3ポイントシュートを許したことを自分の責任と捉え、「詰めの甘さがディフェンスにある。今シーズンのディフェンスに関しては微妙かなって感じです」と、意外にも低い自己評価を下す。
安齋コーチ「責任を取れるメンタルになってきている」
遠藤は川崎との第1戦で18得点、第2戦では20得点と、チームのリーディングスコアラーとなり勝利に貢献した。中でも特筆すべきは第1戦の9得点、第2戦の10得点を最終クォーターに固めて取っている点だ。
栃木を指揮する安齋竜三ヘッドコーチも「本当に信頼しています」と遠藤のオフェンス面での勝負強さを称賛する。「本人も自信を持っていると思うし、そういうところの責任を取れるメンタルになってきている。ああいう時(終盤)に逃げたいっていう選手は結構いると思うんですけど、今シーズンの遠藤は『自分が決めなくて負けたら、自分のせいでいい』っていうメンタルが出来上がっている。それが自信になっているし、良い方向に出ている」
遠藤も「今シーズンに入ってから、ああいう場面で任される場面も多くなりました。自分が外しても仕方がない、じゃないですけど、気楽に打てるようになったし、消極的になってミスをするより決めきれなかったほうがメンタル的にも次に繋がる気がする」と、割り切った思考が現在の好調の要因と捉えている。
こうした遠藤の成長は、期待されがらも思うような結果を残せなかった昨シーズンの経験があってこそ。昨シーズンの栃木は、初年度のBリーグを制した優勝メンバーの多くがチームを去った。そのため、最優秀守備選手賞を受賞した遠藤には、2ウェイプレーヤーとしてさらなるステップアップが期待されたが、シュート精度は下がり、平均得点が微増したにとどまった。
「去年の前半戦で悩んだ分、それが今の自分のスタイルに繋がっています。昨シーズンがあったから、良い調子でできている」
生みの苦しみを乗り越え、指揮官からの絶大なる信頼を勝ち取った遠藤は、王座奪還を目指す栃木を成長しながら牽引している。