ジェームズ・ハーデン

「バスケに集中して、最善のチャンスを手に入れたい」

ジェームズ・ハーデンがクリッパーズの一員として初めての会見を行った。契約延長を巡ってセブンティシクサーズと衝突した彼は、クリッパーズへのトレードを要求。交渉が難航する中、トレーニングキャンプにほとんど参加せず、プレシーズンゲームにも出場せず、シクサーズの面々に「このままハーデンを置いておくのはマイナスでしかない」と思わせることで、最終的に自分の望む移籍を勝ち取った。

スター選手のトレード要求がまかり通る今のNBAにおいても、そのやり方はあまりにも強引すぎる。2021年秋にロケッツを離れると決めてからわずか2年で4チーム目。そのすべてで彼は自分の望むチームへ移籍しており、『ワガママ』と見られても仕方はないが、彼には彼の理屈がありる。

「誰が何と言おうと、僕は優勝したいんだ」とハーデンは語る。「そのためには自分のプレースタイルを犠牲にもするし、収入が減っても構わない」

「ネッツでもシクサーズでもNBA優勝を目指した。純粋にバスケの実力だけで言えば優勝できるチャンスはあったけど、ケガがあり、さらに僕には手の出せないビジネスの問題もあった。それについて話してもいいけど、僕はバスケに集中して、最善のチャンスを手に入れたい」

スター選手がやりたい放題、という見方をされていることをハーデンは知っている。「僕は年俸の減額に応じ、シクサーズで引退するつもりだった。でもフロントは違う考えを持っていて、僕を必要としていなかった。それだけのことだ。僕はSNSを使わないけど、いろんなことを言われているのは知っている。いろんな話が出回っていて、みんなそれを信じているけど、本当のことなんかないよ。僕はいちいち説明したりはしたい。でも一言で言うなら『ここに来ることができてうれしい』だ。クリッパーズでの挑戦が始まることにワクワクしている」

そしてハーデンは「僕はシステムプレーヤーではない。僕はシステムなんだ」と語る。

誤解されがちな表現ではあるが、これは彼が王様としてすべてを取り仕切るわけではなく、チームのシステムの中にいて実力を発揮していくという意味だ。彼はコーチと対話し、信頼されて理解される中で、試合で起こる様々な局面にアジャストしてチームを引っ張る自分の能力に誇りを持っている。「それは僕が本当に大切にしていること。自分で攻めて30得点とか34得点するわけじゃない。それは過去にやってきたことだけどね」

ロケッツからネッツに移籍し、ケビン・デュラントとカイリー・アービングと『ビッグ3』を結成した時、ハーデンは思い切ったプレースタイル変更に踏み切った。得点でチームを引っ張る王様から、チームが擁するタレントの能力を最大化するプレーメーカーへ。「僕は得点できるし、試合を支配することもできる。個人としても優れているけど、誰とでも上手く噛み合い、チームを機能させられるんだ」

そのスタイルでNBA優勝にたどり着ける自信があるからこそ、彼はタレント力が最も高いクリッパーズへの移籍にこだわったのだろう。カワイ・レナード、ポール・ジョージ、ラッセル・ウェストブルックとどんなバスケを作り上げていくか。ハーデンはそれを楽しみにして、新たな一歩を踏み出す。

「個々のスタッツとかはもう過去のことなんだ。そういう意味で僕らは全員が同じページにいる。目標はただ一つだけ。それが何かは誰もが分かっている」