山崎稜

広島のエースシューターとして、ここまでキャリア最多の出場機会を獲得

広島ドラゴンフライズは先週末に行われた横浜ビー・コルセアーズとの連戦を1勝1敗で終えた。初戦は76-80で競り負けたが、第2戦は序盤から圧倒し90-65の圧勝でリベンジを果たした。

昨シーズン、チーム初のチャンピオンシップ出場を果たした広島だが、今シーズンはここまで3勝6️敗と出遅れた。帰化・アジア枠で大きなアドバンテージを生み出すはずだったフィリピンの至宝カイ・ソットが腰椎椎間板ヘルニアによって開幕直前にインジュアリーリスト入り。さらに9月末に行われた天皇杯では外国籍3選手が揃って故障欠場して敗れるなど、思うような準備ができないままシーズン開幕を迎えたことが響いている。

だが、第3節は好調の宇都宮ブレックスと1勝1敗。さらに冒頭で紹介した横浜BC相手の快勝に加え、前節から帰化選手の河田チリジが合流と徐々に状況は好転している。208cm122kgのビッグマンで、日本でのプレー経験も豊富な河田を入れ、外国籍2選手と同時起用するビッグラインナップは、まだまだ連携が不十分だが大きな武器となりえる破壊力を秘めている。

インサイド陣のタレントが揃ってきた広島において、今後の巻き返しの鍵を握っている選手が新戦力の山崎稜だ。今オフ、広島は過去2シーズンに渡ってエースシューターを務めていた辻直人が群馬クレインサンダーズへと移籍。そして、辻と入れ替わる形で群馬から加入したのが山崎だ。

まだ、9試合を終えただけだが、ここまで全試合先発出場でキャリア初となる1試合平均20分以上(23分38秒)のプレータイムを獲得。持ち味の3ポイントシュートを武器に平均7.6得点と奮闘している。

31歳とベテランの域に入る中、大きなステップアップの機会が訪れている山崎だが、「手応えは全くないです」と厳しい自己評価を下す。それはチームが、ここまで黒星先行とスタートダッシュに失敗したからだ。「プレータイムだけを見ればスタートで出してもらい、今までで一番多いです。でも、いかんせんシュートが自分の役割というところで、3ポイントの確率が本当にひどいです。そしてチームが勝てていない状況にすごく責任を感じているところです」

山崎稜

「チームが勝てていないことが、僕の中ではすごく引っかかっています」

山崎が言及したように、ここまで3ポイントシュートの成功率は31.6%と低調だ。しかし、シュートは水物であり、試合数が少ない今は良くも悪くも成功率の振れ幅は大きい。また、ここまで1試合平均6.3本の試投数と、移籍1年目で連携もまだまだの段階でしっかり本数を打てていることは明るい材料だ。

「チームとして僕に打たせようという形もあり、数多く3ポイントシュートを打つ役割を担っています。タフショットになる時もたまにありますけど、大体は空いた状況で打てているので悪い形ではないと思っています。今までは、もう少し打ちたいと思っていたので、本数的には良い感じに打てています」

このように山崎は、自分をシューターの中心として起用してくれるコーチ、そして自分にパスを回してくれるチームへの感謝を強調する。だからこそ、成功率が伸びない現状に歯がゆい思いを抱いている。また、結果的に入れ替わる形となり、同じシューターということから辻と比較されやすい状況にあることを聞くと、「もちろん比べられることは仕方ない部分もあります。また、このことをモチベーションにして臨んでいる部分もあります」と、発奮材料にはなってもネガティブな影響はないと語る。

そして、チームの結果だけを気にしていると山崎は言う。「自分のパフォーマンスに関係なく、チームが勝てていないことが、僕の中ですごく引っかかっています。そこはとても悔しいです」

河田を起用するビッグラインナップが機能するには、スペーシングが何よりも大切で、相手のディフェンスがゴール下に収縮できない状況を作らないといけない。そのためには、シューターがここ一番でしっかり決め切ることが欠かせないことを山崎は分かっている。だからこそ、キャリアで最もコートに立てている現状において、楽しさや充実感よりも先に来る感情がある。「スタートで出させてもらっている責任感、ここで結果を出さないといけない危機感を持っています。今は楽しさよりも、こちらの部分がより大きくなっています」

山崎はキャリア最大のチャンスをモノにできるか、大きな踏ん張りどころを迎えている。彼がチームを勝利に導く長距離砲をしっかり決めることができれば、広島の勝利数も自然と増えていくはずだ。