ジョシュ・スコット

連敗ストップに青木HC「我慢を重ねた中、チームでつかんだ勝利でした」

横浜ビー・コルセアーズは10月28日、広島ドラゴンフライズと対戦。試合終盤までもつれる激闘となったが、チーム一丸となってタフに戦い続けると、最後はオフェンスの要である河村勇輝、ジェロード・ユトフの2人がさすがの決定力を見せ80-76で競り勝った。

試合の立ち上がり、横浜BCはアウトサイドから確率良くシュートを決めて流れを引き寄せ、第1クォーターで24-16と先行する。第2クォーター序盤、広島はこの試合がデビュー戦となる帰化選手の河田チリジと外国籍2人のビッグラインナップを使い、インサイドを強調したオフェンスで点差を詰める。だが、横浜BCも持ち味である攻守の素早い切り替えから河村、ジョシュ・スコットらの得点ですぐにやり返し9点リードで前半を終える。

第3クォーターに入ると、広島が持ち味を発揮する。ドウェイン・エバンスなど機動力のあるビッグマンがディフェンスリバウンドを取り、そのままボールプッシュを行うことでイージーシュートの機会を多く作り出す。この結果、横浜BCの2点リードと肉薄した展開で第4クォーターに突入する。

ここから共にディフェンスで踏ん張り、ロースコアの膠着状態となったが、横浜BCは同点で迎えた残り1分半にユトフの3ポイントシュートで抜け出すと、残り13秒には河村が勝利を決めるダメ押しの長距離砲を沈め激闘に終止符を打った。

連敗を2で止め、4勝4️敗で勝率を5割に戻した横浜BCの青木勇人ヘッドコーチは「我慢を重ねた中、チームでつかんだ勝利でした」と総括。この我慢比べに競り勝てた要因に第4クォーターの選手起用があった。横浜BCは第4クォーターの大半の時間帯を河村、ユトフの2大エース抜きで戦い、2人がコートに戻ってきたのは残り2分半になってからだった。

最後に河村、ユトフの3ポイントシュートで突き放して勝てたのは、、彼らが勝負どころをフレッシュな状態で迎えられたことも影響しているはず。青木ヘッドコーチは、次のように第4クォーターの采配について振り返る。「コートに立っていたメンバーの守備のインテンシティがものすごく高かったです。しっかりと耐えることができていたので彼らを信頼して出し続けました。そして河村選手、ユトフ選手は山場が来るまで温存していく。最後、2人にバトンを渡せれば勝ちに繋げられると見ていました」

総合力で勝利をつかんだ横浜BCだが、青木ヘッドコーチが「ジョシュ・スコット選手が前節の欠場から戻ってきました。まだまだ数字に現れてはいないですが、彼の存在がこのチームにとって大きいということを表現してくれました」と語るように、スコットのゴール下の献身的なプレーも光った。

ジョシュ・スコット

「今、自分がシュートを打ててないですが、いずれ解決できます」

この試合、スコットは29分26秒のプレータイムで9得点9リバウンドを記録。Bリーグでのキャリアも長く、1試合2桁得点、2桁リバウンドのダブル・ダブルを連発している彼の実績からすると意外だが、この試合の数字は3部門ともにシーズンハイの数字となった。

2シーズン前には、宇都宮ブレックスの中心選手としてリーグ制覇を経験。Bリーグ屈指のビッグマンはフィジカルと機動力を兼備したハードワーカーで、ガードとの連携による合わせのプレーで得点を奪う術に長けている。だからこそ、河村、森井健太とリーグ随一のパスセンスを備える司令塔コンビを有する横浜BCへの加入は相性抜群と思われた。

しかし、実際はここまで周囲とうまく噛み合わず本領を発揮できていない。それはヘッドコーチの「まだまだ数字に現れていない」という表現からも明らかだ。ここまでの成績からスコットの状態を不安視する外野の声は小さくない。だが、本人は至って冷静だ。

「新しいチームに移籍し、僕よりも年下の選手が多いなど新しい経験をしています。うまく溶けこむには時間がかかるものです。外の声は気にしていません。自分が気にするのはチームをどのように良くしていけるか。チームのために自分がどうやって成長していくのかだけです。今はそのことだけに集中しています」

そしてスコットは、「今は毎日、自分がフィットするのに必要なことをチームと一緒に探しています。そのプロセスにおいては我慢が必要となります。ハードワークを続けていき、ベストな方法を見つけたいです」と焦らずに、やるべきことを遂行していくのみと語る。

今シーズンはまだダブル・ダブルを記録していない点についても「スタッツは気にならないですし、どんな形でもチームの勝利に貢献することが大切です」と語り、河村、ユトフのダブルエース体制で自身にシュートチャンスが少ないことへの不満もない。

「2シーズン前に宇都宮で優勝した時、レギュラーシーズンの多くの部分で僕はオフェンスの中心でしたが、チャンピオンシップのエースはマコ(比江島慎)でした。チームの中で、誰がファーストオプションになってもいいですし、試合毎に中心となって攻める選手は変わるものです。チームで戦うことが何よりも重要です。今、自分がシュートを打ててないですが、そこは気にしていないです。いずれうまく解決できると思います」

また、自身だけでなく、チーム作りにおいても「シーズン中はいろいろなことが起こります。すべてのチームにアップダウンがあるものです」と続ける。「今、僕たちはお互いの強みを発揮できるシステムを模索しています。ディフェンスではよりコミュニケーションを取らないといけません。ただ、シーズンが進むにつれて良くなっていけます。敗戦でさえも、このチームが成長するための良い経験としてポシティブにとらえ、前に進んでいくだけです」

現在のスコットは横浜BCで本来の力を発揮できていない。だが、自身のやるべき事を理解し、チームファーストの姿勢にブレはない。運動量が豊富で献身的なプレーは健在であるだけに、いずれ彼はダブル・ダブルを連発するようになるだろう。それは過去の実績が示している。