タイリース・マクシー

トバイアス・ハリス「全員が相手チームの脅威に」

セブンティシクサーズはプレシーズンゲームが始まってもジェームズ・ハーデンの問題を解決できていない。彼はトレード要求を取り下げないままチームに合流して練習をこなしているが、ここまでのプレシーズンの2試合ではプレーせず、取材に応じてもいない。ただ、このまますんなりシクサーズでプレーを続けることはないだろう。問題は解決したわけではないのだ。

それでもチームは開幕に向けた準備を進めている。今オフにはドック・リバースからニック・ナースへのヘッドコーチ交代があり、主力選手の移籍は(少なくとも現時点で)ないにしても、そのバスケは大きく変わる。ナースが就任した時点で、ジョエル・エンビードとハーデンによるピック&ロールからすべてが始まる今までのスタイルは、よりスピーディーで自由なものへと変わると予想されたが、プレシーズンゲームでは実際にその変化が起きている。

エンビードもまだ調整中で試合に出ていないため、2人のピック&ロールはやりようがないのだが、タイリース・マクシーがよりチームを引っ張り、他の選手がボールを持って自分の判断でクリエイトする場面も多い。

その違いが顕著なのはトバイアス・ハリスであり、PJ・タッカーだ。若手はまだチームに馴染むのに手一杯だが、彼らベテランはナースのバスケを理解し、実践する段階に入っている。2人とも経験豊富な実力者だったが、これまでは『使われる側』の脇役でしかなかった。しかし今は、トバイアスはリバウンドを持ったらそのままプッシュする。タッカーがドリブルでコートを駆け上がり、ポストアップでミスマッチを突くシーンが何度もある。オフェンスの様々なスキルを活用できるのは彼らにとっては久々のことで、今やっているバスケが楽しいのは間違いない。

トバイアスは言う。「ジョエルとジェームズがいないんだから違うバスケになるのは当たり前だけど、動き回ってハイペースでプレーするというチームのテーマは見えている。新しいスタイルでは、全員が相手チームの脅威とならなければいけないんだ」

ニック・ナースはラプターズ時代、様々な戦術を駆使することで結果を出してきた。当然、シクサーズでもそれが求められているし、彼もそのつもりでいる。ナースは言う。「ゲーム中の調整も大事だが、まずは様々な戦い方を身に着けたい。私はそこに時間を費やしている。時間はかかるが、誰がどの戦い方を得意とし、上手く実行できるか、選手たちは理解しなければいけないし、私も理解しなければいけない」

スピーディーな攻めは良いディフェンスとリバウンドから。エンビードの役割が変わることについてナースはこう語る。「ディフェンスはディフェンスリバウンドを取りきることで完結する。速攻を出すには守ってリバウンドを取らなきゃいけない。それをどうやるか。それは毎日集中して練習することであり、ガードも含めて全員がかかわることだ。リバウンドが本当に強いチームは、ガードが何度もリバウンドに絡んで回数を底上げしている。だからそれがジョエルであっても、一人の選手にかかっているわけじゃない」

細かな攻守の戦術についてナースは触れようとしないが、シクサーズがそれを高いレベルで遂行できるチームになることを彼は疑っていない。「ミスは毎試合でるが、それも仕事の一部だ。ミスを見逃さず、そこから学びを得て、どんどん良くなっていく。築き上げるまでに時間はかかる。ラプターズでもそうだった。だけど、時間をかけてできるようにするんだ」