開幕節でSR渋谷に連勝、リバウンドを制してのセカンドチャンスポイントが大きな勝因に

過去2シーズン続けてチャンピオンシップ出場と安定した強さを見せている名古屋ダイヤモンドドルフィンズと、日本代表のジョシュ・ホーキンソンやアルバルク東京の顔だった田中大貴らの獲得に成功したサンロッカーズ渋谷の対決は、開幕節を代表する好カードの1つだった。結果はホームの名古屋Dが連勝。初戦は先行逃げ切りで79-70、逆に2試合目は第1クォーターで14点のリードを許したところから74-72での逆転勝ちと、異なる展開を制したことで名古屋Dの総合力の高さがより目立った。

今シーズンの名古屋Dはショーン・デニスヘッドコーチが就任3シーズン目を迎え、さらに昨シー ズンから日本人選手全員、アジア枠のレイ・パークスジュニアが残留を果たした。主力の1人である張本天傑が右膝前十字靭帯損傷で離脱中だが、千葉ジェッツから197cmの大型フォワードである佐藤卓磨を獲得と充実の陣容だ。一方でスコット・エサトンのインジュアリーリスト入りによって、チームの要となる外国籍3選手が全て入れ替わった。

新戦力の中でもフォワードである201cmのロバート・フランクスに加え、ワールドカップ2023のブラジル代表ティム・ソアレスも211cmの長身ながら高い走力の持ち主で、揃って名古屋Dの得意とするアップテンポなスタイルに合っている。一方、スミスは140kg近い巨体が示すように機動力がある選手ではなく、名古屋Dのスタイルにフィットできるのかが注目された。

だが、開幕節ではインサイドを支配できるスミスの強みを効果的に活用し、機動力不足によるディフェンス面のマイナスを大きく上回るプラス効果を生み出した。2試合ともに名古屋Dはオフェンスリバウンドで優位に立ち、セカンドチャンスポイントで初戦は26- 6、2試合目も18-8と上回ったことが連勝に繋がったが、スミスの存在が大きな助けになったのは間違いない。

デニスヘッドコーチは、「瞬間的にインパクトを与えてくれる選手が欲しくてジョシュア選手を獲得しました。相手に(インサイドの守備で)ローテーションを強いることで、外の選手が打てるようになると思います」とスミス獲得の理由を語る。

また、スミスがスムーズに適応できている要因として、昨シーズン後半に途中加入したパワータイプのアラン・ウィリアムズとプレーした経験が生きていると続けた。「昨シーズン、アラン選手がいた時に使っていた作戦をジョシュア選手で使えています。(スミスをフィットさせることは)そこまで大変な訳ではないです」

新戦力ソアレス「ジョシュアのような選手は、世界中を探しても他にいないと思います」

スミスがもたらすインパクトに関しては、新戦力のソアレスも大きな手応えを得ている。アウトサイドでボールをもらってのドライブ、外角シュートを得意とするソアレスだけに、ゴール下でこそ力を発揮するスミスとの補完関係はばっちりだ。「みんながオフェンスに絡めるようにするのが自分の仕事です」と意気込むビッグマンは、「ジョシュアのような選手は、世界中を探しても他にいないと思います。彼とプレーするのは楽しいです」と笑顔を見せる。

「正しいタイミングでインサイドの彼にボールを入れると得点を絶対に取ってくれます。自分のチームメートでよかったです。相手として絶対に対戦したくないですね。彼はサイズがあるだけでなく、頭の良い選手です。彼がいることで多くのアドバンテージが生まれます。彼がいる時は、スペーシングをしっかり取るため、僕は外でプレーします」

ここまでスミスについて強調してきたが、フランクス、ソアレスの2人はここまで積み上げてきた名古屋Dのスタイルと相性抜群だ。オフェンスでの多彩な能力に加え、機動力とリーチの長さを備えた守備力でも大いに期待できる。キャプテンの須田侑太郎も、チームの進化に大きな手応えを感じている。「元々、僕たちはオフェンシブなチームで、自ら仕掛けることで相手のリズムを変える戦い方を得意としています。今シーズンはよりアップテンポになり、苦しい時間帯にディフェンスで粘れるようになっていると試合を通して感じました。この部分を伸ばすことで、もっとグレードアップしたチームになれます」

そして、新戦力のフィットについても自信を見せる。「これまで僕たちがやってきたデニスヘッドコーチが掲げるバスケットボールに、新しい選手もアジャストしてくれています。 ジョシュ選手は走るタイプではないですが、『僕に合わせなくていい、僕がチームに合わせるから』と言ってくれています」

最後にデニスヘッドコーチは「みんながうまくいくためには10試合、15試合くらいかかるかもしれないです。うちのチームには伸び代しかないです」と、これからの成長に自信満々だ。日本人選手たちが作り上げた強固な土台の上に、攻守で厚みをもたせる外国籍選手が加わった今シーズンの名古屋Dは、デニス体制3年目のさらなる飛躍へこれ以上ないスタートを切った。