ドリュー・ハンレン

『Tokyo Samurai』主催のスキルクリニックに登場

東京近郊のインターナショナルスクールや米軍基地内の学校に通う選手を中心に、U15からU18世代が集まるクラブチームの『Tokyo Samurai』が、ブラッドリー・ビール(サンズ)やジェイソン・テイタム(セルティックス)、ジョエル・エンビード(セブンティシクサーズ)といったNBAのスター選手たちにスキルトレーニングを行っているドリュー・ハンレン氏を招き、個人スキルのクリニックを開催した。

米NCAA1部のベルモント大でポイントガードだったハンレン氏は卒業後、スキルトレーニング等を提供する『Pure Sweat』という会社を設立。プロからアマチュアまで広く技術向上の手助けをしつつ、講演などで全米を駆け回っており、知名度は高い。

先月30日から2日間、東京のセントメリーズインターナショナルスクールで行われたクリニックはユース年代の選手たちが対象で、11歳から14歳までと、15歳から18歳と2グループに分けて開かれた。同29日には川崎市の体育館でSamurai所属の選手たちにのみに対してのクリニックも催された。

来日は初めてながらこれまで36カ国でクリニック等を行ってきたハンレン氏は、移動による疲れなども見せず、快活に動き回りながら参加者全員に聞こえるような大きな声で指導にあたった。

ドリュー・ハンレン

Simplexity——難しいことをどれだけ平易に伝えるか

クリニックを眺めていると、ハンレン氏が選手たちに教えるドリルの大半が基礎的なものでありながら、実践的なものであることに気づかされる。例えば、1対1からのドライブでは、攻める側の選手に対してボールを持っていない逆側の手をいかにフィジカルに使いながら自身のシュートに持っていくかを強調したり、ステフィン・カリー(ウォリアーズ)やデイミアン・リラード(バックス)らNBA選手たちを引き合いに出しながら、緩急を使うことが守備選手を抜き去る際に重要であるかを説いた。

「ファンシー(独創的)なドリルを教えるスキルトレーナーも中にはいますが、結局、チームが試合に勝つための真実は1つしかありません。それは試合の中で選手自身が本当にうまくできるスキルを伸ばすことです。なので、私の練習は『すべて試合で使う』という目的があります」

世界には数多くのスキルコーチがいる中で、彼の信条や得意とする領域は何かと問うと、ハンレン氏は「細部にこだわるところだ」と答えた。他者に細部を教える際、ニュアンス等の認識を共有することはえてして難しいものだが、ハンレン氏は「Complexity(複雑さ)」と「Simplicity(平素さ)」を合わせた造語である『Simplexity』、つまり難しいことをどれだけ平易に伝えるかこそが彼のアプローチであると語った。

NBA選手たちがその舞台にいるのは、言うまでもなく彼らが傑出した才能の持ち主だからだが、大半がオフシーズン等にハンレン氏のようなスキルコーチを雇い、技術の向上に努める。昔と比べて現代のバスケットボールではあらゆるポジションの選手に万能さが求められるということもあるだろう。ハンレン氏は「選手たちは、自身の今の力量以上のモノを得るために良い指導を追い求めています」と言う。

ドリュー・ハンレン

「目的を持って個人練習に取り組んでもらいたい」

アメリカ・ミズーリ州セントルイス出身のハンレン氏がスキルコーチとなった経緯は異例だ。高校生の頃には毎朝5時過ぎから体育館へ行き、数百本のシュート練習を欠かさなかったという彼の評判を聞きつけたビールの母親が、ハンレン氏に「中学生の息子に練習を教えてやってほしい」と頼んできたのが始まりだった。その成果でビールが頭角を現したことで、ハンレン氏の存在はさらに知れ渡るようになり、デイビッド・リー(元ウォリアーズなど)やテイタムらセントルイス周辺の選手たちにもトレーニングを施すようになっていった。

ハンレン氏は、若い年齢から指導者に正しい技術を教えてもらうことの重要さを説く。「私がこうしたキャンプやクリニックを開くのは、若い世代の選手に必要なことは何かを知ってもらい、それを受けてより目的を持って個人練習に取り組んでもらうためなのです。そうすれば、より良い結果も得られます」

今回のクリニックでも彼は、「自分が教えたことをすべてできるようになる必要はない。自分が伸びると思うものを突き詰めていってほしい」と参加者たちにメッセージを送っていた。