渡邊雄太

ドラフト指名外の選手がサマーリーグで活躍して契約をもらう奇跡

試合の終了と共に実況が叫び、解説の馬瓜エブリンが泣きながら「おめでとう」と繰り返す。画面の中では大写しになった渡邊雄太が両膝に手をついて身を屈めながら泣いている。そこに河村勇輝が駆け寄ってきて、ウイニングボールを渡す。男子日本代表が来年のパリで行われる世界大会への出場を決めたカーボベルデ戦のラストシーンは、その後の地上波やSNSで繰り返し流れた。ウイニングボールがカーボベルデのヘッドコーチに半ば強引に奪われてしまうというオチはついたが、それも今となっては笑い話だ。

私もフィンランド戦ではテレビの前で涙し、ベネズエラ戦とカーボベルデ戦はスポーツバーで雄叫びを上げた。現地取材こそ叶わなかったものの、今回の沖縄で行われた世界大会はいちファンとして全力で応援を楽しませてもらった。

しかし、それから数日が経って徐々に冷静さを取り戻すと、私の心には感動とはまた別の感慨が湧いてきた。また、渡邊雄太が正しかったな……。

思い返してみると、私が最初に渡邊のことを見誤ったのは2018年のことだ。当時、渡邊は大学卒業後にドラフトで指名を受けず、サマーリーグからNBAに挑戦していた。大のNBAファンたる私は、当初その挑戦を記念受験程度の感覚で眺めていた。ドラフト指名外の選手がサマーリーグで活躍して契約をもらうというのは奇跡に近い。おそらくNBAに詳しい人ほどそういう認識を持っているだろう。私もそんな常識を物差しにして渡邊のNBA挑戦をとらえていたのだ。

ところが蓋を開けてみると、試合を追うごとにプレータイムを伸ばした渡邊は、5試合平均9.4点、4.2リバウンド、1.6ブロックという素晴らしい成績を残した。そんなネッツでの渡邊の活躍を見たグリズリーズが2ウェイ契約をオファーし、史上2人目の日本人NBA選手が誕生することになった。私の常識は完全に覆された。

渡邊雄太

「俺の努力が、アメリカ行きを正解にさせた」

メンフィスにいた2シーズンは渡邊にとって苦しい時期だった。

私もダブドリvol.6で渡邊の取材に現地を訪れたが、なにせGリーグとNBAで起用法が違う。Gリーグでガードとして出場し、活躍してコールアップされたと思ったらNBAではパワーフォワードで使われて力を出せずに終わる。そんなちぐはぐな日々が続いた。

当時、渡邊はことあるごとにNBAで生き残るためにロールプレーヤーを目指すという趣旨の発言をしていたが、私は内心疑問に思っていた。Gリーグでプレーする時や、2019年に中国で行われた世界大会でのモンテネグロ戦のように、ロールプレーヤーというよりはもっとメイン側の仕事に色気を出した方が渡邊の良さが出るのではないかと感じていたのだ。

しかし、それは杞憂だった。渡邊はラプターズで3&Dタイプのロールプレーヤーとしてプレーできることを示すと、昨シーズン前半のネッツではメインローテーションに組み込まれ、一時は3ポイントシュートの成功率でリーグ首位に立つ大活躍を見せた。渡邊は再び自分の正しさを証明したのだった。

そして、今回の世界大会である。大会前、渡邊はパリへの切符を取れなければ代表を引退すると明言した。背水の陣を敷いたということはわかるし、引き際の美学もあるのだろう。とはいえ八村塁の参加が叶わなかった状況下、ファンにとって渡邊の存在は希望の光である。このタイミングですべき発言なのだろうか。そもそも、その名前を聞くだけで「絶対にあきらめない」とか「常にハードワーク」という言葉が想起されるほど、ブランド化された不屈の渡邊雄太のイメージともマッチしない。なんとも不可解である。

そんな私の心配をよそに、その後大会が渡邊の思惑通りに進んだのは読者諸兄もご存知の通りである。「雄太さん、まだまだ引退させませんよ」と言った河村を筆頭にチームメートたちは発奮した。明らかに渡邊の言葉が日本代表躍進の一つの鍵となっていた。

またも渡邊は正しかった。

「今でこそNBA選手になれているから、『あの時アメリカに行って良かったね』とか『正解だったね』とか、いまだに言われる。正直、俺からしたら大学4年間はめちゃくちゃ険しい、相当に大変だった。結果的に正解だったけど、その時その時を考えたら全然正解じゃなかった。でも俺の努力が、アメリカ行きを正解にさせた」

先日行ったクリニックに参加した子供たちに、渡邊はそう語った。

渡邊雄太

「やりたい場所でプレーをするのを大事にした」

サマーリーグ、NBA、世界大会と、これまで私は都合三回渡邊の決断を見誤ってきたが、渡邊に言わせれば人一倍の努力で三回の決断を正解にしたということになるのだろう。

ちなみに世界大会を除けば直近で渡邊の決断に私が疑問を持ったのは、サンズとの契約だった。ベテラン・ミニマム(ベテランに適応される最低保証額)でサンズに行くという報道が出た時、軽く眩暈がしたのを覚えている。昨シーズンの渡邊の活躍なら最低でも倍はもらえると思っていたからだ。渡邊は、「サンズよりお金を出してくれるチームもあった。ただ自分のことを考えると、今はお金ではなく、やりたい場所でプレーをするのを大事にした。また、その時はLAにいたんですけど、サンズのフロントオフィスはすぐにLAに来て、僕のことをどれだけ欲しいかを話してくれた。そのミーティングが決め手になりました」と語ったが、それでも腑に落ちなかった。NBAの世界では契約のサイズで如実に選手の扱いが変わる。チーム事情で割を食うのはいつだって契約の軽い選手だ。そんなことを考えながら私はしばらく鬱屈としていた。

しかし、世界大会の顛末を目撃した今、私は心変わりした。世の中で起きる事象に疑いの目を持つのがコラムニストの仕事だからいささか職責放棄のきらいはあるが、渡邊については盲目的に信じて応援してもいいのではないだろうか。なぜなら、渡邊の決断が現時点で正解かどうかは重要ではないからだ。

これまでもそうだった通り、渡邊はきっと人並外れた努力を続けるだろう。そして今回の決断も、いずれ正解に変えてくれるはずである。今シーズンは無心でそれを見届けようではないか。私はそんなつもりでいる。

さて、私同様渡邊の決断を見守りたいという諸兄にお知らせだ。今シーズンから楽天モバイル「Rakuten最強プラン」の契約者は無料でNBA Rakutenを視聴できるようになった。通常のLEAGUE PASSは月額4,500円なので、乗り換えればかなりお得にNBAを楽しめる。乗り換えが面倒という方には、デュアルSIMのプランが有用だ。SIMを買い足すだけなら番号が変わるという手間もない。データ使い放題で月額2,980円、3GBまでの使用までなら980円という価格設定になっていて、それぞれの生活スタイルに合わせて選択できる幅が広いのも魅力的だ。ちなみに私はデュアルSIMの契約を検討している。NBA観戦を楽しみつつ、楽天モバイルの使い勝手次第ではメインに切り替えるつもりだ。諸兄も自分に合ったプランを見つけ、今シーズンも快適かつお得にNBA視聴を楽しめることをお祈りしている。

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