ロスターだけでなく戦い方も大きく変化
今オフはヘッドコーチのモンティ・ウィリアムズに続き、クリス・ポールとディアンドレ・エイトンをトレードに出し、これで2年前にファイナルへ進んだメンバーはデビン・ブッカーのみと大きくチームを動かしたサンズは、ブッカー、ケビン・デュラント、ブラッドリー・ビールを中心にした新たなチームが始まることになります。
ポイントガード不足という事情があっても、個人で点が取れる選手が3人いて、そこへ渡邊雄太も含めたロールプレイヤーを揃えたことで、オフェンスの役割分担は分かりやすく、偏ったロスター構成を気にする必要はないでしょう。余計なことはせず、スーパースターの能力を存分に生かすことだけを考えて構築してくるはずです。
ポイントはディフェンス面にあります。時に個人でどうにかできてしまうオフェンスに対して、ディフェンスはスイッチやローテーションのルールなどチーム全体の共通理解が必要であり、特に新しいチームは連係ミスが多発しがちです。新指揮官のフランク・ボーゲルもトレーニングキャンプ初日にフィジカルなディフェンスの重要性を強調しており、試合を通してインテンシティと集中力を保てるかが問われます。
リムプロテクトとリバウンドを任せられるビッグマンがいなくなった反面、運動量が多く複数のポジションを守れるウイングは増えました。ジョシュ・オコーギー、ケイタ・ベイツ・ジョップ、イシュ・ウェインライト、グレイソン・アレン、ナシール・リトル、そして渡邊と少しずつ特徴の異なるウイングが揃い、全員がエースキラーでもヘルプ担当でもあれば、リバウンドを取ってトランジションに走る戦術が作りやすくなりました。
エイトンを中心にディフェンスの役割が明確に分かれていたこれまでのスタイルから、オールラウンドなウイングが流動的に役割を変えていく戦術へと移行することになります。また、ビックマンのユスフ・ヌルキッチはリムプロテクト力には欠けるものの、ゴール下のフィジカルな戦いやドライブコースに先に入り込むヘルプ能力を持っており、ポストで起点役になれるオフェンス面も含めてウイング中心の戦い方に適した選手で、攻守に安定感をもたらすはずです。
スーパースターを揃えた『ビッグ3』は戦い方が固定化されてしまうことが難点ですが、今シーズンのサンズはロールプレイヤーを豊富に揃え、対戦相手の特徴に応じた柔軟な対応ができそうです。ヘッドコーチのボーゲルは2020年のプレーオフにおいて、対戦相手と試合展開に応じてビッグマンを2人並べることもあれば極端なスモールラインナップを採用するなど、ディフェンス面の巧みなアジャストでレイカーズを優勝に導いた実績があり、采配面での不安もありません。
この2年間でブッカー以外のロスターが大きく入れ替わりましたが、ロスターだけでなく戦い方も大きく入れ替わることになります。オールラウンダーが役割を流動的に入れ替えていく戦術は、選手同士の信頼関係や連携の構築に時間はかかりますが、完成すれば多様な戦い方が可能になるだけに、シーズンを通してケミストリーを構築していくことになります。