安間志織

2021年にトヨタ自動車アンテロープスを退団し、Eisvögel USC Freiburg(ドイツ)、Umana Reyer Venezia(イタリア)でプレーした安間志織は今年、古巣のトヨタ自動車に3季ぶりに復帰した。2020-21シーズンにプレーオフMVPに輝きリーグ初優勝の原動力になった安間は、リーグ三連覇を逃したチームにどのようなエナジーを与えるのか。10月に開幕する2023-24シーズンの意気込みを聞いた。

「自信があったかといったら、正直なかったです」

——日本に戻ってきた決め手は何でしたか?

イタリアでプレーを続けることもできたんですけど、自分が今、一番成長できるところがトヨタだと思ったからです。

——2年間の海外挑戦でどのような収穫がありましたか?

考え方です。海外の選手ってすごく自信を持っているんですよ。自分が一番盗みたい部分です。イタリアのウマナ・レイアー・ヴェネツィアにはWNBAを経験した選手が2人いて、彼女たちはいつもチームにエネルギーを与えていました。その2人にどういうメンタルでコートに入っているのかと聞いたら、1人は「コートに入ったら誰も私のことをガードできないと思っている」と言い、もう1人は「自分の中で遂行することを決めている。走力があるから『走る』。あとは『リバウンド』」と言っていました。常にポジティブなんですよ。私から見れば「さっきのはちょっと気にしてよ」っていうところも、全然気にしてないように振る舞ったり。ゲーム中にミスをする時もあるけど、引きずっていたら良いプレーができないし、私自身、日本でプレーしていた時もイタリアでも完全にミスを断ち切ることができなかったので、そういうマインドセットは真似したいし、実際に心がけています。

——そういった海外の環境よりも、トヨタ自動車のほうが成長できると感じられたのですね。

それはすごくありますね。トヨタ自動車はチームプレーも練習内容も充実しています。強度の高いデイフェンスからというスタイルも好きですし、スキルトレーニングにも力を入れています。海外で在籍したチームではそういったことをなかなか感じられませんでしたし、ドイツのチームにはトレーニングの器具すらありませんでした。自分だけで取り組むには限界を感じていて、マネジメント会社には「器具があるジムを持つクラブと契約して」と伝えたくらいです。

——以前、トヨタ自動車の大神雄子ヘッドコーチが「安間選手に自信を持たせてあげたい」と話していました。

自信があったかと言ったら、正直なかったです。イタリアの時もそうでした。チームメートは「シオリはできるんだからもっとやりなよ。いつも通りやってよ。その方が私たちもやりやすいし、サポートはするから」って言ってくれたんですけど、自分でブレーキをかけてしまっていて。うまくいく時もあるんですけど、空回りする時もありました。トヨタ自動車ではうまくいった理由を整理して、少しずつ増やしていけたらと思います。

——大神HCは「安間選手が背中を見せて行動してくれているから、すごく助かっている」とも話していました。トヨタ自動車に復帰してあらためて自身の成長を感じたことはありますか?

個人練習をやるほうだとは気づきました。人にはそれぞれの準備の方法がありますし、どうしたら成長できるかという答えは各自が持っています。私は人の話を聞くのが嫌いじゃないし、知らなかったことを学びたいので、チームメートの話を聞きながら自分に合うようなものを試すようにしています。また、スキルコーチやトレーナーには「こういうプレーをしたいんだけどどんな練習がありますか?」とか、「こういう動きができるようになるにはどういうトレーニングが必要ですか?」ということをすぐ聞きに行きます。そのほうが効率がいいと思うし、私は何より、ただうまくなりたいんです。

安間志織

目標はリーグ優勝、代表復帰も視野「いつものプレーでチームを引っ張りたい」

——現時点の将来的なビジョン、目標について教えてください。

今回は日本代表に入っていなかったんですけど、チャンスはゼロじゃないと思っています。選考は自分でコントロールできることではありませんが、挑戦したいです。そのためにはWリーグで勝たないといけない。自分にフォーカスを置きながら成長していけば、どうにかなるのかなと考えています。

——Wリーグ復帰1年目の目標は?

もちろん、目標はブレずに優勝で、どれだけ我慢して自分たちのプレーができるかどうかです。また、自分がWリーグでどれぐらいできるかを気になっている人はたくさんいると思います。あとは、トヨタ自動車は人数が少ないのでケガ人を出さないことですね。チームでやることはそれぞれが分かっているので、どれぐらい細かく全員が共通意識を持って、「ここでいいや」じゃなく「あと1歩、どれだけできるか」という気持ちでプレーできるかです。イヴァンさん(イヴァン・トリノスアソシエイトコーチ)はデイフェンスについてのコーチングが厳しいんです。本当に一つの角度が違うだけで注意されるんですよ。でも、本当にもうここまで来たら、それをやらないと勝てない。ディフェンスの立ち位置が1歩違うだけでオフェンス側はちょっと気になったりするじゃないですか。だから、どれだけ妥協しないでできるかというところですね。

——Wリーグは移籍が増えました。時代は変わってきましたね。

すごく面白いと思います。各チームが補強しているので簡単なシーズンはありません。今季の優勝チームをいろんな人に良そうしてもらっても、それぞれバラバラのチームを挙げるんじゃないかなと思います。

——7月に29歳を迎えました。選手としての成長をどのように感じていますか?

まだまだいける気がします。現状維持では選手としてキャリアを続けるのは無理なので。やりたいことも多いですし、身体のことをはじめ、もっと早く取り組んでおけばよかったという部分もあります。修正していきながら身体が動くまで現役生活を続けたいですね。

——リーグ優勝、日本代表復帰といった目標の中には、海外への再挑戦も入っていますか?

チャンスがあれば絶対に行きたいと思います。今度はもうちょっとチームを選べるようになりたいですね。

——3季ぶりに安間選手のプレーを見る国内ファンには、どういったプレーを見てほしいですか?

まずデイフェンスです。チームを勢いづけられるかなと思います。韓国遠征ではチーム全員の頑張りもありつつ、自分自身もディフェンスで貢献できたと思います。あとは、良いボールハンドルをしながら得点にもこだわりたいです。もうちょっとシュート本数は増やしていかなきゃいけないと思います。

——母校の中村学園女子高校で実施された鶴屋百貨店とのメモリアルゲームでも、スキルの高さが伝わりました。見ている側を楽しませるプレーも安間選手の魅力ですね。

本当にありがたいことに、見ている人から「何をしてくれるかワクワクする」っていう声をいただくんですけど、そこは自分の良さでもあるのかなと思っています。いつもの自分のプレーでチームをどんどん引っ張っていきたいですね。

——最後に、新シーズンに向けたメッセージをお願いします。

3シーズンぶりのWリーグなので自分自身も楽しみにしています。全員で頑張っていくので、応援してください!

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