水戸健史

文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE、鈴木栄一

「より上を狙う明確な気持ちを持って戦っている」

1月16日、富山グラウジーズは敵地で川崎ブレイブサンダースと対戦。この試合に勝てば中地区で2位の川崎と同率で並べる試合で、前半は高確率でシュートを沈める川崎に対し、ジョシュア・スミスを中心にセカンドチャンスからの得点で互角の戦いを演じていた。しかし、後半になって不用意なターンオーバーから崩れてしまい大差で敗れる結果となってしまった。

富山にとっては、持てる力を十分に発揮できないまま消化不良で終わった感の強い試合となったが、一方で過去2シーズンとの戦いぶりとは大きく異なる。

一昨年がレギュラーシーズン18勝、昨年は24勝に終わり、ともに残留プレーオフに回った。昨シーズンはB2との入れ替え戦に出場する『土壇場』まで追い詰められたが、辛くもB1残留を果たしている。しかし、今シーズンは半分を終了した時点ですでに18勝をマーク。Bリーグ3年目にして初の勝率5割超え、チャンピオンシップ出場を狙える位置にいる。

この躍進をもたらした要因を、チームリーダーの一人である水戸健史はこう語る。「昨シーズンからコーチも選手も違っているので、一概に『これ』といったものはないかもしれないです。ただ、会社としても変化があって、より上を狙う明確な気持ちを持って戦っているのは選手としても見えます」

「アーリーカップで優勝したことで、上位争いができるレベルで戦える部分は少し見えていました。手応えはありますが、まだまだ足りないところはたくさんあります。それを一つずつクリアしていけばもっと強いチームになれます」と、課題はあるものの開幕前に抱いた好感触をキープできていると言う。

その上でさらなるステップアップには、守備の改善が不可欠であると強調する。「オフェンスに関して問題はないと思いますが、失点がすごく多いです。その中でもトランジションで毎試合20点くらい取られているので、そこを減らせていければもっと勝つチャンスは増えていきます」

水戸健史

「bjの時も弱小からだんだん強くなっていきました」

Bリーグ誕生から大きく陣容が変わった富山にあって、水戸はbjリーグ最終年から今のチームに在籍し続けている唯一のメンバー。それだけでなく2008-09シーズンから富山一筋、今シーズンで11年目と、水戸の歩みは富山の歴史そのものといっていい看板選手だ。

今やベテランとなった水戸だが、それでもハードワークでチームのための数字に出ない部分を含めての献身的なプレーに全く変化はない。「今はプレー面でいうとシックスマンとして試合に出ることが多く、その中で流れを変えていきたいです。そして年齢的には上ですけど、ハッスルしてプレーすることは常に意識しています」

振り返ればbjリーグ時代も最初はリーグ下位に低迷する時期が続く中、徐々に右肩上がりで成績を上げ、最終年にはファイナルに到達した。そして、今シーズンの前半戦、着実に進歩している姿には、「bjの時も弱小からだんだん強くなっていきました。そこはちょっと似ているかなという思いはあります。チームの強化、ブースターさんの盛り上がりが年々増しているところも似ている部分はあります」と、手応えを得ているところはある。

今後、富山がより激化する上位争いで生き残りチャンピオンシップ出場を果たすためには、スミス、レオ・ライオンズ、宇都直輝ら中心選手以外のメンバーのさらなるステップアップが欠かせない。だからこそ、ベンチから流れを変えられる水戸の存在がより大切になってくる。