開催国として迎える来年のパリオリンピックに向け不安要素ばかり
東京オリンピックとユーロバスケで銀メダルに輝いたフランス代表は、グループリーグではカナダに続いてラトビアにも敗れ、ワールドカップの舞台から早々に姿を消すこととなりました。ただ、フランスの敗戦は結果としては衝撃であるものの、内容としては十分に考えられるものでした。
ルディ・ゴベアのリムプロテクト力を中心に、フィジカルに戦える選手を揃えたフランスのディフェンス力は間違いなく一級品です。プレッシャーを強めた守り方と、抜かれても高さで抑え込める高さを融合させ、ボールを奪ってからのカウンターアタックは『守りながら攻める』フランスの強さの基盤でした。
しかし今回は、日本との親善試合の時からマークの受け渡しミスを多発しており、強みだったはずのゴベアの高さは、むしろアウトサイドまで追いかけられない弱点として使われることが多く、チームのディフェンスコンセプトが機能していませんでした。3ポイントシュートを多投する日本やラトビアとの相性の悪さは明確で、だからといってベテランが多く成熟しすぎたチームは柔軟な選手起用で守り方を変えることもできませんでした。
そして最大の問題はオフェンス面にあります。エバン・フォーニエのスペシャルな活躍に頼ったプレーメークばかりのオフェンスは、それでも決めてしまうフォーニエの能力の高さと、ゴベアやガーション・ヤブセレのセカンドチャンスの強さで耐え抜いてきていただけで、チームとしては数年前に限界を迎え、大会ごとに展開力がなくなっていました。
今大会はポイントガード陣を大きく入れ替えてきたことで、プレーメーク力の低さが加速しました。ラトビア戦では後半には得点力を期待してシルヴァン・フランシスコを投入しましたが、ボールを持ちすぎるプレーメークにフォーニエが怒鳴りつける場面もありました。タイムアウトを使って意思統一した終盤の大事なポゼッションで、フォーニエがオフボールで動き、優位なシチュエーションでパスを受けようとしたものの、フランチェスコがパスまでに時間をかけすぎ、ボールをもらった時点でショットクロックは3秒を切っていたフォーニエには、タフショットを放つ以外の選択肢がありませんでした。
近年は次々と有望な若手ポイントガードが登場し、NBAへと進んでいるフランスですが、アメリカで求められる個人での得点力が足りず、試合に出られないことでプレーメーク力も伸びず、代表でも主力に収まる選手が出てきません。チームの核となる若手ガードが出てこないことが、明確に結果に繋がってしまった今大会でした。
開催国として迎える来年のパリオリンピックは、フォーニエを中心としたチームの集大成になる大会ですが、このワールドカップでは不安要素ばかりが目立ってしまいました。ビクター・ウェンバニャマだけでなく、フランス国籍を取得したジョエル・エンビードが参戦する可能性もありますが、チームのコントロール役が機能しなければ宝の持ち腐れにもなり得ます。まだ見ぬ新たな才能の登場を期待するしかない今大会の結果でした。