ポテンシャルを秘めながら伸び悩む、崖っぷちの27歳
レイカーズは新シーズンの14人目の選手としてクリスチャン・ウッドと契約した。レイカーズにとってはアンソニー・デイビス、ジャクソン・ヘイズに続く3人目のセンターとなるが、ウッドの契約には「パワーフォワードとしてプレーしたい」というデイビスの要望に応える意味が大きかったと言われている。
こうしてレイカーズはヘイズとウッドを獲得した。サラリーキャップに余裕のないチームとしては、最善の手を2つ続けて打ったと言えるだろう。ヘイズはペリカンズで4年プレーした23歳。器用さには欠けるがゴール下で強さを発揮するリムプロテクターだ。ウッドはまたタイプが違い、パワフルでありながら3ポイントシュートを1試合平均で4本から5本打てる。
ただし、ヘイズもウッドもミニマム契約の選手であり、過度の期待は禁物だ。八村塁もジャレッド・バンダービルトもいるパワーフォワードにデイビスが回れば戦力過剰になる。デイビスを2つのポジションで使いつつ、デイビスがパワーフォワードとしてプレーする時間帯には、タイプの異なる2人のセンター、ヘイズとウッドを活用するローテーションになるだろう。
ただ、この2人のセンターは立場が異なる。ヘイズはまだ若く、レイカーズで経験を積むことで大きな飛躍があり得る。一方でウッドは崖っぷちだ。これからキャリアの全盛期を迎える27歳でありながら、この時期まで契約を得られずにいたのは性格に問題があるからだと言われている。
ウッドは2015年のNBAドラフトにエントリーするも指名を得られず、2019-20シーズンになって5チーム目のピストンズでようやくブレイクし、ロケッツに移籍して成功を収めた。しかし、苦労が多かっただけに自分中心で考えての行動が多く、「チームのために自己犠牲のできない選手」というレッテルを貼られてもいる。
昨年夏にマーベリックスと契約した時には、ルカ・ドンチッチのために身体を張ってスペースを作り、そのキックアウトから3ポイントシュートを決める選手として大いに期待された。彼のプレースタイルにぴったりの役回りに思えるが、チームの信頼を勝ち取ることはできなかった。1月に親指のケガで3週間欠場した時期を挟んで、マブスは彼をトレードに出そうとしたが交渉は成立せず。シーズン後半のウッドは明らかにやる気を失い、マブスがプレーオフ進出を逃す一因となった。
ウッドについては「自分がファーストオプションでなければ気分良くプレーできない」との評価もある。ピストンズではアンドレ・ドラモンドが移籍して、彼が攻撃の中心になった途端に目覚ましいパフォーマンスを発揮し始めた。ロケッツではジェームズ・ハーデンがいなくなった。だが、マブスでファーストオプションはあり得ない。それはレイカーズも同じだ。
ロッカールームで明るく振る舞い、チームメートと良い関係を築くウッドは『嫌われ者』ではない。ドンチッチもウッドのことを認めていた。だが、マブスは早々に彼を切り捨てようとした。
NBAで7シーズン、289試合でプレーして、14.8得点、7.3リバウンド、3ポイントシュート成功率37.9%という立派なスタッツを残しながら、彼は一度もプレーオフに出場したことがないし、一度も契約延長をオファーされたことがない。
レイカーズにはレブロン・ジェームズという世界最高のメンターがいる。勝利を義務付けられたチームで、自己犠牲を厭わない選手が揃っている。ウッド自身、自分が変わらなければいけないことには気付いているはず。ここで変われなければ、彼はいつまでたっても大きなポテンシャルを秘めながら伸び悩む選手であり続けるだろう。