取材=鈴木栄一 構成=鈴木健一郎 写真=本永創太

渡嘉敷来夢と間宮佑圭に立ち向かうもリバウンドで完敗

1月8日に行われた『オールジャパン2017』女子の決勝。「勝って当たり前」と見られている『女王』のJX-ENEOSサンフラワーズは、富士通レッドウェーブを91-67で破って4連覇を決めた。「どうせJXが勝つって周囲には言われますが、私たちは不安です。やってみなければ分からない」とJX-ENEOSの吉田亜沙美は言うが、圧倒的な強さを持つことに加え微塵の慢心もないJX-ENEOSの強さはやはり際立っていた。

そんな『女王』に挑み、弾き返されたのが富士通のエース、長岡萌映子だ。この決勝戦、富士通が優勢だったのは第1クォーターの半ばすぎまで。長岡は立ち上がりから、日本代表のインサイドコンビである渡嘉敷来夢と間宮佑圭に全開で立ち向かい、攻守にチームを引っ張った。

だが、そのパフォーマンスは長くは続かない。世界レベルの個人能力に加えコンビネーションも成熟している渡嘉敷と間宮の前に、第2クォーター以後は沈黙させられた。

得点とリバウンドの2部門で3位に入り、大会ベスト5に選ばれた長岡。試合後の表彰式では笑顔を見せたが、欲しかったのは個人タイトルではなく優勝だ。コートから引き上げて来ると、報道陣に対し「終わって一番に悔しいし、JXに勝たないと意味がない。これをもらってすごく申し訳ない」との言葉だけを絞り出すと、しばらくは悔し涙だけが溢れ出た。

「昨日(準決勝)みたいに自分が活躍してチームを引っ張っていかないといけないのに、こういう結果に終わってしまいました。率直に悔しいです」

両チームの差が最も出たのはリバウンドだ。JX-ENEOSの59に対し富士通は半分以下の28。長岡はチームトップの8リバウンドを記録したが、JX-ENEOSでは渡嘉敷が18、間宮と宮澤夕貴が11と圧倒された。「トータル的にリバウンドが最終的なJXの強さなんだろうなと思います。ああいう大きい選手たちをどうやって止めるのかが自分たちの課題でした」

「自分たちの身長だと抑えられる部分は限られてくるので、オフェンスでどれだけ勝てるかも重要ですが、足が止まってしまいました。シュートの確率も自分を含めみんなダメでした。外のシュートの確率をもっともっと上げていかなけれないけないと思いました」と長岡は試合を振り返る。

「JXがずっと勝ち続るのは、強いんですけど面白くない」

大会を通じてエースとして奮闘。自身として初めてオールジャパン決勝の舞台に立ったが、長岡は「JXを相手にできなきゃ意味がない」と考えている。「タクさん(渡嘉敷)相手にどれだけできるかが自分には求められています。もっと活躍しなければチームの勝ちにつながりません。シャンソン戦までは表現できていたかもしれないですけど、まだまだです」

女子の勢力図がJX-ENEOSの一強体制となって久しいが、ライバルがそれを甘んじて受け入れているわけではない。長岡は言う。「自分たちがリーグを面白くしていかないと。JXがずっと勝ち続るのは、強いんですけど面白くないというか、やっている意味がないので。今回、私たちがこの場に立てて挑戦権があったのに、こういう結果で終わってしまって本当に悔しいんです。もう一回、もう何年も言っているかもしれませんが、もう一回勉強してプレーを磨いて、対策していかないといけないと思っています」

確かにJX-ENEOSは強い。だが、ライバルチームのエースである長岡のような選手が負けに慣れてしまったら、いよいよリーグは魅力を失ってしまう。だが、長岡に関しては心配無用だ。大会ベスト5に選ばれる栄誉が「JX-ENEOS相手に活躍できなかった」という悔し涙にたちまち変わってしまうほどの『勝利に飢えて』いるのだから。

敗戦を糧にさらに大きなプレーヤーになる。23歳の長岡には、まだまだ伸びしろがたっぷりと残されている。