「歴史は繋がっていて、今までの歴史の中で1秒も無駄な時間なんてなかったです」
FIBAワールドカップ2023で熱戦を繰り広げ、日本中のファンを盛り上げている男子日本代表は、いよいよ大会最終戦となるカーボベルデ戦を迎える。そして、この一戦に勝利するとアジア1位となりパリ五輪出場が決定。48年ぶりの自力五輪出場という偉業を達成となる。
日本代表の絶対的な大黒柱、渡邊雄太は大会直前の強化試合で右足首を捻挫し、コンディションに不安を抱えたまま大会を迎えた。だが、ここまで4試合ともフル稼働し、1試合平均で33.8分出場、17.3得点、5.3リバウンドに1.8ブロックを記録。守備ではショットブロッカーとして相手にプレッシャーを与え、攻撃では相手の注意を引きつけることで味方のスペースを作りだすなど、スタッツ以上の存在感を見せている。
ベネズエラ戦の日本代表は、立ち上がりから相手の強度の高いディフェンスに苦しみリードを許す劣勢が続いた。それでも第4クォーターに33-15とビッグクォーターを作り出し、86-77と劇的勝利を挙げた。
38分出場で21得点8リバウンド2ブロック、獅子奮迅の活躍を見せた渡邊は勝因をこう語る。「フィンランド戦の苦しいゲームを勝ち切れた自信と経験。そして会場の皆さんがしんどい時間でもずっと声を出し続けてくれたおかげで、自分たちも下を向くことなくやりきれました」
そして、「途中から、ブザーが最後になった時に1点でも勝っていれば。欲張らずに1本ずつ返していこうと伝えていました」と続け「今日に関しては、37分相手のペースだったと思います。イライラした状態が続きましたが、最後までみんなが1つの勝利に向かって足を動かして身体を張ってやっていけたので誇らしいです」と、40分間粘り強く戦い続けたチームメートを称えた。
日本代表で戦うことに強い覚悟を持っている渡邊は、大会前このように語っていた。「勝てない選手がずっと上にいても仕方がないです。それなら若い良い選手がいっぱい出ているので、早く世代交代をやってしまった方がいいです。今のチームをパリ五輪に連れていくことができなかったら、もう代表選手の資格はないくらいの気持ちで日の丸を背負っています」
リオ五輪の最終予選、ワールドカップ2019、東京五輪など渡邊は、これまで日本代表で多くの敗北を経験してきた。今日勝ってパリ五輪を決めることができれば、この悔しさをついに晴らすことができる。だが、渡邊が背負っているのは、個人的な思いだけではない。
「日本代表は今の12名だけではないです。今回、選考でずっと争っていて最後に落ちてしまった選手もいます。今までしんどい時期がありましたが、そこで支えてきてくれていた人たちがいるおかげで、僕たちがこれだけ皆さんに注目をさせてもらっている。歴史は繋がっていて、今までの歴史の中で1秒も無駄な時間なんてなかったです。僕たちがパリを決めることが今まで頑張ってくれたことへの恩返しだと思います」
そして、渡邊は語る。「まだまだ代表のユニフォームを着て、このチームでプレーしたい。パリ五輪を決めて死ぬまで代表活動を続けます」。今夜、沖縄アリーナにてパリ五輪出場への歓喜と共に、渡邊の生涯代表宣言が行われることを日本バスケットボール界の誰もが望んでいる。