グループリーグで爪痕を残せず「自分には足りないものがたくさんあります」
FIBAワールドカップ2023、日本代表はグループリーグを1勝2敗で終え2次ラウンド進出を逃した。しかしドイツ、オーストラリア、フィンランドと強敵揃いで『死のグループ』と呼ばれる中、フィンランドから歴史的な1勝を挙げ、ドイツ、オーストラリアを相手にしても後半のスコアを上回るなどポジティブな材料を得ている。
特にジョシュ・ホーキンソン、渡邊雄太の2大エースの奮闘によって、ゴール下の肉弾戦で十分に対抗できていることは大きい。順位決定戦の相手は、少なくともグループリーグで戦った相手以上のサイズ、フィジカルを持ってはいない。日本にとってはディフェンスリバウンドからのトランジションという持ち味をより発揮することが期待できる。
ただ、ホーキンソンと渡邊はともに大会前の負傷で万全とはいえない状況の中、中1日の過密スケジュールで長時間コートに立ち続けている。そのため、あと2試合に今のペースで出場できるかは心配である。だからこそ、順位決定戦におけるキーマンとして挙げたいのがセンターの川真田紘也だ。
強化試合で身体を張ったディフェンスで存在感を示し、評価を急上昇させた川真田はホーキンソンのファウルトラブルもあって初戦のドイツ戦では15分の出場と大きなチャンスを得た。だが、ここで相手の圧力に屈したプレーに終わったことでトム・ホーバスヘッドコーチの信頼を得ることができず。フィンランド、オーストラリア戦の2試合合計で6分のプレータイムに終わっている。
オーストラリア戦後、川真田はグループリーグ3試合において「この舞台を目指し、ここで戦うために頑張ってきましたが、レベルの差、中でもフィジカルの差を感じました。自分には足りないものがたくさんあります」と振り返り、実際に対峙することであらためて世界の壁を痛感している。
そして、ゴール下でもらったパスをファンブルし、せっかくのシュートチャンスを逃すなど、細かいミスが出たことを悔いた。「馬場(雄大)さんとの合わせのプレーでミスをしてしまいました。自分は3ポイントシュートを打てと言われている訳ではないです。だからこそリバウンドからのシュート、合わせのパスからのシュートで得点を取ってチームの役に立ちたい。そのためにも小さい部分をもっとしっかりしないといけないです」
「ジョシュとプレータイムをシェアして勝てた方が、僕としてはうれしい感情があります」
そして、今回得た教訓の1つとしてサイズ、フィジカルが自分より上の相手だからこそ、気持ちの部分でより負けられないとの思いを強くする。「トムさんからは『もっと強気で行ってこい』と言われています。リバウンド、ディフェンスを始め、すべてに対して強気で行くことが今回の代表で僕に求められています。もっと気持ちを出したプレーをしないといけません。そうして、世界の強豪相手にやり合っていかないといけないです」
川真田は、もちろん仲間であるホーキンソンの大活躍を誇らしく思っている。ただ、同じポジションの選手として、ホーキンソンに日本のゴール下を任せっきりであることへの申し訳なさ、悔しさもある。
「ジョシュがすごいことは分かっていますが、彼に任せっきりではなく、もっと試合に出てジョシュを助けたい。僕のプレータイムが増えれば、ジョシュも楽ができます。また、僕とジョシュではタイプが違うので、スタイルも変わってきます。タイムシェアができれば、いろいろと戦略の幅が広がります」
先述のようにグループリーグ3試合で、川真田は世界の高さ、フィジカルの強さに打ちのめされた。だが、彼の気持ちは折れておらず、それどころか順位決定戦でなんとしてもやり返したいと逆襲の機会を虎視眈々と狙っている。
「次の試合はリバウンド、ディフェンス、ハッスルプレーとここまでの代表の練習でやってきたことを全面的に出していきます。例え短い時間の中でも、最初にコートに入った時に良いプレーをすればトムさんも『今日の川真田は行けるぞ』となって、その後で使ってくれると思います」
そして、「ジョシュとプレータイムをシェアして勝てた方が、僕としてはうれしい感情があります。2人で頑張っていきたいです」と貪欲さを失っていない。
今夜の中国の結果次第だが、現時点で日本はアジア1位となってパリ五輪への出場権をつかめる可能性が残っている。「まだまだ終わっていないです。どれだけ自分たちのバスケットをして終われるかということが次に向けての大事になっていきます。そこをもっと突き詰めていきたいです」と、川真田は意気込む。過密日程による疲労は間違いなく蓄積されてきて、これからのワールドカップはより総力戦の様相を呈してくる。だからこそ、川真田が持ち前のハッスルプレーで、日本代表にエナジーを与えることがより必要となってくる。