『唯我独尊』のウェストブルックが最大限の譲歩を提案
ケビン・デュラントはNBA優勝という目標のためにサンダーからウォリアーズへと移籍した。この決断の是非は問われるべきものではない。彼は自分の権利を行使しただけだ。ただ、「なぜサンダーを離れたのか」は突き詰めて考えてみたい部分である。
彼とオクラホマシティは相思相愛の関係にあった。サンダーはNBA優勝への最短ルートではないが、それなりに有力なチームだったはずだ。今に至るまで根強く信じられているのが、ラッセル・ウェストブルックの独善的なプレースタイルを嫌ったから、というストーリーだ。
ウェストブルックはオフェンスの大半でボールを支配するタイプ。『2大スター』ではあっても、プレーの主導権をウェストブルックに握られることをデュラントが嫌がった、という説はそれなりに信憑性がある。
『ESPN』が伝えたところによれば、昨年6月下旬にサンダーはデュラント慰留の話し合いを持っている。ウェストハリウッドのステーキハウスにおけるデュラントとの『面談』の席で、ウェストブルックはデュラントに、「これまでと違う形で自分にできることはあるか?」と打診したそうだ。
これらの慰留工作に対するデュラントのリアクションを見て、サンダー側は残留を確信した。結局その読みは甘く、デュラントはウォリアーズとの契約を決めて、サンダー史に残る最強デュオは解散となったわけだが、それよりも驚くべきは、『唯我独尊』というイメージで知られるウェストブルックが、プレースタイルの変更まで提案するほどにデュラントに譲歩したことだ。
ただ、結果的にデュラントの移籍はサンダーにとって良かったとも言える。昨今NBAで主流となっているスター選手の集結という流れにこそ逆行するサンダーだが、強烈な個性を持ったエースに引っ張られる形で新たなチーム作りを始め、競争の激しい西カンファレンスの荒波を乗り越えようとしている。
デュラントがサンダーに残留したとして、ウェストブルックがその個性を殺すようでは魅力半減でしかない。オスカー・ロバートソン以来となるNBA史上2人目の『平均トリプル・ダブル』達成が現実味を帯びることもなかっただろう。
デュラントはゴールデンステイトでハッピー、ウェストブルックもエースの自覚を持って驚異的なパフォーマンスを披露し続けている。「なるべくしてなった」状況が、デュラントとウェストブルックの『今』なのかもしれない。