富樫も絶賛「彼が入ってかなり空気が変わりました」
ワールドカップの1次ラウンド第2戦、バスケ男子日本代表がフィンランドから18点差を覆す劇的な逆転勝利を収めた。
日本は第1クォーターを7点リードして終えたものの、その後はフィンランドの美しい連携プレーを止められず、10点ビハインドで前半を折り返した。後半に入ってもフィンランドに高確率でシュートを射抜かれ、さらにはオフェンスも停滞したことで、第3クォーター残り2分46秒にはこの試合最大となる18点のビハインドを背負った。
世界の壁は高い。それを認めざるを得ない瞬間だったが、富永啓生がここから敗戦ムードを変えた。すぐにミドルシュートを沈めた富永は、続けてステップバックスリーを決めて反撃ののろしを上げた。これで息を吹き返した日本は馬場雄大がラストポゼッションで3ポイントシュートを成功させ、10点差まで詰めて第3クォーターを終えた。富永の活躍は止まらない。再び3ポイントシュートを沈めると、スティールからボールプッシュした際に、アンスポーツマン・ライク・ファウルを誘発。さらにジョシュ・ホーキンソンへ連続でアシストするなど、停滞していたオフェンスを一気に活性化させた。ラストは河村勇輝がプルアップスリーを連発し、98-88の逆転勝利を演出したが、試合の流れを変えたのは間違いなく富永だった。
富永はゲームチェンジャーとなった自身のプレーをこのように振り返った。「10点ぐらい負けていた時から、とりあえず自分がどうにかしようと思っていました。そこで一本決めることができて、そこから流れがどんどん良くなっていったと思います」
フィンランドは富永を警戒せざるを得なくなったことでディフェンスが崩壊した。キャプテンの富樫勇樹も富永の存在が反撃のきっかけとなったと称賛した。「彼が入ってかなり空気が変わりました。相手が今までと違うことをしなきゃいけなくなり、ローテーションもしずらくなっていたと思います。すごく大きかったですね」
ドイツ戦からの見事なバウンスバック「自信がつく試合になった」
最終的に富永は7本中4本の3ポイントシュート成功を含む17得点2アシストを記録した。ただ、本人はチームハイの3スティールを挙げたように、ディフェンス面で違いを生み出せたことに喜びを感じていた。「3ポイントシュートを決めることができたのはすごくうれしかったですが、それ以上にディフェンスの部分で貢献できたことがうれしいです。バスケットプレーヤーとして成長したし、本当に自信がつく試合になったと思います」
富永はチーム内で最もシュート力があるが、一方でディフェンス面に不安を抱えている。だからこそトム・ホーバスヘッドコーチは富永の起用法に頭を悩ませていた。さらに言えば、初戦のドイツ戦は徹底マークに遭い、シュートを打たせてもらえずわずか5得点に終わった。こうした不安要素をすべて跳ね除けて、日本に勝利をもたらした。富永は言う。
「それこそドイツ戦で自分の役割ができず、チームを助ける事ができなくて、すごく悔しい思いをしました。本当に今日は自分がどうにかしてやろうと思っていて、自分がコートにいる間は120%の力を出し切ることを徹底してやっていました」
3ポイントシュートが生命線となる日本において、ステップバックスリーやディープスリーなど、相手の守備を無効化できる富永の存在は欠かせない。