「やっぱり、NBAのトップクラスの選手だと思います」
バスケットボール男子日本代表はスロベニア代表との国際強化試合に68-103で敗れた。
スロベニア代表の大黒柱であるルカ・ドンチッチには23得点7リバウンド7アシストを許した。自ら得点しつつ、フリーのシュートチャンスを幾度となく作り出した彼に試合を支配されたことがこのスコアに繋がったと言える。
トム・ホーバスヘッドコーチも「もう、ドンチッチは止まらないんです。スペシャルな存在」と脱帽。オールNBAファーストチームに4年連続で選出されているドンチッチの存在感は抜きん出ていた。
そのドンチッチとマッチアップをした原修太は素直に相手のすごさを称えた。「ポイントガードなのに、あの大きさであの速さ。一歩も大きいですし、後出しじゃないですけど駆け引きがうまいです。身体の強さというより、状況判断や駆け引きのうまさというのを感じました」
原は2022-23シーズンのBリーグでベストディフェンダー賞を受賞した、言わばディフェンスのスペシャリストだ。強靭なフィジカルに加え、確かな敏捷性を併せ持ち、1番から4番まで守れる守備範囲の広さが彼の最大の武器と言える。75-94の完敗を喫したニュージーランドとの強化試合第2戦では、ほとんどの選手が相手のフィジカルに屈する中、原は意に介さず自身の持ち味であるディフェンス力を発揮した。試合には敗れたものの、「フィジカル面で言えば、圧倒されたという思いはないです。(昨シーズンに同僚だった)クリス(クリストファー・スミス)、ヴィック・ローの方がすごいです。Bリーグの外国籍選手たちの方が強かったりします」と、自身のディフェンス力にさらに自信をつけていた。
そんな日本のディフェンスの要とも言える原を、ドンチッチは軽々とあしらった。原も「1対1の強さだったり、駆け引きのうまさ。あれほどの速さや大きさというのはBリーグにはいなかったです」と言う。
「ビッグマンのスクリーンも上手でそこでちょっとズレができると、僕より大きい分、そこから後手後手になってしまいます。フェイクに引っかかって3ポイントシュートのファウルを犯しましたけど、あそこまで駆け引きのうまい選手はBリーグにはいません。やっぱり、NBAのトップクラスの選手だと思います」
「相手のフラストレーションを溜めさせられるような仕事を続けていきたい」
自身で振り返ったように、第2クォーター残り1分9秒の場面でドンチッチのステップバックスリーを警戒した原はフェイクに引っかかり、個人3つ目のファウルを犯してフリースローを3本与えた。その直後、ドンチッチは肩を気にする素振りを見せ、スロベニアのヘッドコーチが原に歩み寄り言葉を投げかけた。
「僕は英語が苦手ですけど、ウチはチャンピオンシップがあるから、落ち着けみたいな感じで言われたんです」
原はその時のやりとりをこのように明かした。強化試合は本戦の準備であり、指揮官が選手のケガにナーバスになるのも理解できる。渡邉飛勇がアンゴラとの練習試合で負傷し、代表離脱を余儀なくされた悪夢を目の当たりにした日本にとってはなおさらだ。しかし、原に悪気はなく、跳んでしまった瞬間に両腕をたたんでファウルを避けようとしていた。ヘッドコーチの思いは分かるが、第三者目線から見れば、一生懸命プレーした結果であり、そこまでヘッドコーチに言われる筋合いはないだろう。結果はともあれ、原も自身のプレーを肯定した。
「正直、僕の中では危険なプレーをしているつもりはないですし、故意に足元に入っているわけではないです。あれでイラついているなら、僕の一つの仕事ができたのかなと思います。ダーティーとも思ってないですし、ケガをさせようとも思っていません。相手のフラストレーションを溜めさせられるような仕事を続けていきたいです」
ワールドカップ前最後の強化試合に100点ゲームで敗れた以上、ディフェンスの立て直しは急務だ。渡邊雄太が加わることでリバウンドやリムプロテクトの部分で底上げには期待ができる。それでも、「ドンチッチ選手を経験できたのは、本戦に向けてすごく良い経験になりました」と言う、世界トップレベルとのマッチアップを経た原のさらなる伸びしろが、日本には欠かせない。