ポポビッチの助言により現在のコーチングスタイルが確立
NBAにおいて、ヘッドコーチの立場は常に一寸先は闇だ。どんなに実績を残したところで、1つの失敗でその座を追われることも珍しくない。たとえばマイク・ブーデンフォルツァーはバックスで2021年にNBA制覇を達成するも、昨シーズンにプレーオフ初戦で敗退するとあっけなく解任されている。
このように長期政権を構築するのがより困難となっているNBAにおいてナゲッツの指揮官のマイケル・マローンは新シーズンで9年目を迎える。昨シーズン、ナゲッツに初のNBAタイトルをもたらす偉業を達成したことで今後も長期政権を築く可能性は高い。
現在リーグ屈指の名将と評されるマローンだが、今の自分があるのはスパーズのグレッグ・ポポビッチのおかげと強調する。マローンは、ポポビッチの下でスタッフを務めた経験はない。しかし、『ESPN』のザック・ロウ記者のポッドキャスト番組に出演した際、次のように語った。
「コーチ・ポポビッチはほぼ間違いなくNBA史上最高のコーチだ。かつてマイク・ブラウンとダニー・フェリーのいるクリーブランドで私が(アシスタントコーチの)仕事を得られたのは彼の影響力のおかげだ。また、ニューオリンズでモンティ・ウィリアムスの下で(アシスタントの)仕事を得るための助けにもなってくれた。グレッグ・ポポビッチの存在なくして、私はNBAでヘッドコーチになれなかった」
ポポビッチの尽力もあり、マローンは2013年にキングスで初めてのヘッドコーチ職を得る。キングスでは結果を残せず2年目のシーズン途中に解任されたが、翌年にナゲッツのヘッドコーチに就任したことからも分かるように、その手腕は高い評価を得ていた。
そして、感情を前面に押し出し、選手に寄り添う現在のコーチングスタイルの確立には、ポポビッチの助言もあったと振り返る。「2013年、サクラメントでヘッドコーチの仕事を得た時だと思う。コーチ・ポポビッチから連絡をもらって『自分らしくやるんだ。君は熱血漢で、感情的だ。そして自分らしくやるには、常に同じ姿勢でいることだ。そして君がどれだけ選手たちのことを愛しているのか知らせないといけない』と言われた。もし、選手たちが私と一緒にいると感じなくなったら、おそらく私はヘッドコーチの立場にいないだろうね」
1996-97シーズンの途中から今もスパーズでヘッドコーチを続けているポポビッチに追いつくのは非現実的かもしれない。だが、ポポビッチの教えを守り続けるマローンも、同様に多くの指導者、選手から敬意を獲得するヘッドコーチになっているのは確かだ。