「是が非でも残ることが合宿をスタートしてからの目標。少しずつ近づいている」
男子日本代表は先日の韓国遠征を経て、本大会の登録メンバー12名を巡る争いが15名にまで絞られた。これまでポイントガードの3番手の座をずっとキープしていたテーブス海がカットされたことは大きな注目ポイントとなった。これは本職がウイングでありながら、ポイントガードに挑戦していた西田優大がポイントガードとしての序列を上げたことを意味する。
ウイングとしても起用できる西田だが、トム・ホーバスヘッドコーチは今回のテーブスを外した理由として「テーブス海のプレーが悪かったのではありません。テーブスをカットする決断は難しかったですが、西田の(ポイントガードとしての)練習がもっと必要です。もし、ポイントガードが4人、5人といたら、彼の練習機会が少なくなってしまいます」と語る。
この発言からすると西田は、今後ポイントガードに専念することが予想される。そして指揮官はポイントガード3名体制の考えを明かしていることから、西田は12名入りに大きく前進した格好だ。
「Window1からずっとメンバーに入っているのに、本戦だけ外れるのは悔しいです。なんとしてもメンバーに残りたいと思います」
7月上旬に行われた台湾との強化試合の後、こう語っていたようにトム・ホーバス体制になってから誰よりも代表の試合に出場していた西田にとって、ワールドカップは誰にも譲れない目標だ。ただ、当初は目標達成に近づいたうれしさよりも別の感情が胸を大きく占めていた。「海は同級生ですし去年のWindow、アジアカップからずっと一緒にやってきました。手応えは少なからずありますけど、すごく複雑な気持ちもありました」
ただ、それと同時に、切磋琢磨してきた盟友のためにもしっかりと気持ちを切り替え、あらためてメンバー入りをなんとしても果たしたいと語る。「是が非でも、残ることが合宿をスタートしてからの目標だったので、そこに対して少しずつ近づいているのかなと思います。みんなが残りたいから、練習の強度もすごく高かったです。逆に複雑な気持ちを持つと申し訳ないところもあります。そういった意味で絶対、海の分まで残ってやろうというのが今の気持ちです」
「河村に相談したり、トムさんにも何を求められているのかを聞いたりしました」
そして、自身の評価を高めた韓国との連戦の2試合目のパフォーマンスについては、同じポイントガードの富樫勇樹、河村勇輝にはないサイズ、フィジカルの強さを生かしたディフェンスの強みを発揮できたと振り返る。「僕たちが出ている時間帯で、ディフェンスの強度がグッと上がったのはすごくいいなと思っていました。そこから1日目とは変わってトランジションでの得点が増えたので、そこはどんどん増やしていきたいです」
また、オフェンスについては「アタックでゴール下まで行き切るところや、そこからの状況判断で戦っていければなと思っています」と言い、ドライブによる守備の切り崩しをより強調していく姿勢を示した。今では日本代表でポイントガードを務めるほどのハンドリング能力を有しているが、「高校では全くやっていなくて、ドリブルをつくのも嫌なくらいでした」と明かしたのは驚きだ。
このステップアップは、本人の新しい挑戦を素直に受け入れる姿勢に加え、ワールドカップ本大会のコートに立つためには良い意味で手段を選ばないがむしゃらさがもたらしている。「最初から上手くいくことばかりではなかったですし、すごく考えながらやる部分もあれば、自分の感性を大切にしているところもあります。河村に練習以外の時間に相談したり、トムさんに何を求められているのかを聞いたりしました。残るために必要な事は全てやろうという気持ちで、そこが生きていると思います」
現状、西田はポイントガードで3番手の立ち位置だが、すでに触れているように富樫、河村にはないサイズ、フィジカルという明確な武器がある。さらに言えば、本大会で戦う世界の列強のガード陣は、アジアにはないサイズを備えている。これからのニュージーランド、アンゴラ、フランス、スロベニアといった難敵との対戦で、西田が自身の強みをより発揮できれば、ポイントガードの序列に変化が起こることもあり得る。