「お客さんを楽しませることが大事」
ウインターカップは堅守速攻のスタイルを極めた福岡第一が優勝を果たした。だが、会場を最も沸かせ、一番の注目を浴びたのは桜丘の富永啓生だろう。6試合で平均39.8得点を記録し、大会得点王となった富永は当然のように優秀選手賞を受賞した。
準決勝で福岡第一に敗れたが、一夜で気持ちを切り替え、3位決定戦の帝京長岡との試合では46得点を挙げてチームにメダルをもたらした。「勝たないとメダルを持って帰れないということで、ミーティングをして『絶対に勝つぞ』という気持ちでできたのが大きかった。最後の大会で3位という結果で終われたことがうれしいです」と笑顔を見せる。
福岡第一との準決勝には敗れたが、富永はディフェンスに定評のある古橋正義の徹底マークを受けながらも、タフショットを次々と沈めていった。前半だけで31得点を記録し、前半を2点リードで折り返すなど、王者を苦しめた。
福岡第一の守備は徹底しており、フリーで打てる場面はほぼなかった。それでも3ポイントシュートラインから遠く離れた位置から放つシュートがリングに吸い込まるたびに会場はどよめいた。またそうしたタフショットを決めた後には全身で喜びを表現し、高校生の大会でありながらバスケットボールの持つエンタテインメント性を存分に見せてくれた。
「お客さんを楽しませることが大事だと思うので、自分のやれることを全力でやりました。全国のみんなにこういうプレーを見てもらえてうれしい」と富永は言う。
初戦の県立広島皆実戦後、富永は「60点を取りたい」と話していたが、3位決定戦で挙げた46得点が1試合の最高得点となった。「ウインターカップは初めてで、やってみた率直な感想は、ディフェンスも簡単に点数を取らせてくれなかったです。60点取れなかったのは悔しいんですけど、最後に勝って終われたのでやり切った感はあります」と、すべてを出し切って大会を終えた。
「日本代表に選ばれて、東京オリンピックに出たい」
最初で最後のウインターカップを勝って終えた富永は、将来について「NBA選手になりたい」と語る。容易ではないことは重々承知。「フィジカルをつけるトレーニングをしつつ、ドライブの精度を高めて、3ポイントシュートの確率を上げていかないといけない」と富永は言う。
線の細さが目立つ富永にとってフィジカル強化は避けては通れない問題。「筋肉痛も嫌いなのであまり好きじゃない」とフィジカルトレーニングについて語った富永だが、「ディフェンスの当たりも強かったですし、この高校バスケが終わったのをきっかけにもっと身体作りをしていきたい。もっと強くなりたい」と語る。
その意識は日本代表にも向いている。U16、U18の代表経験を持つ富永は「日本代表に選ばれて、2020の東京オリンピックに出たい」と高い目標を掲げる。ドライブと3ポイントシュートを得意とする富永だけに、自身が目指す選手像を問われると、「比江島(慎)選手と辻(直人)選手を混ぜた感じになりたい」と欲張りな答えが返ってきた。
坊主頭について「髪の毛を洗うのも楽ですし、バスケットマンらしいので、これといって変える気はない」と話す富永。一見して非効率的に見えるプレーであっても、抜群のシュート力でウインターカップの観客を楽しませたそのプレースタイルも変わらずに貫いてほしいものだ。