ワールドカップにおいてサンズの渡邊雄太と共に、日本代表のインサイドを支える中心メンバーとして期待されるのがジョシュ・ホーキンソンだ。NCAA有数のパワーカンファレンスであるPac-12のワシントン州立大で2年から4年まで中心選手として活躍し、Bリーグでプロバスケットボール選手としてのキャリアをスタートさせた。ここまで日本一筋である28歳の若武者はトム・ホーバスヘッドコーチの求める外角シュート力と機動力、さらにハードワークを兼ね備えたビッグマンとしてチームに欠かせない存在になっている。そんなホーキンソンにワールドカップへの意気込みや、文武両道の部分について聞いた。

大学時代以来となるラウリ・マルカネンとの対戦「とても楽しみです」

――日本代表に欠かせない存在として、メディアからも多くの注目を浴びています。2017年秋に日本に来てから最も多くのスポットライトを浴びている現状をどう感じていますか。

最初の頃はたくさん取材があるなと思ったけど、今は多くのインタビューにも慣れました。ただ、大変なのは日本語で答えることです。大半の質問の内容は理解できていますが、詳しい内容の返答を日本語ではできません。簡単で短い日本語でいいなら、質問に答えることはできます。ただ、僕はもっと思慮深いコメントをしたいので英語で言っています。次のステップは日本語で長くしっかりと答えることですね。

――ビッグマンのポジションにおいて渡邊選手と共にフル稼働が予想されます。

Bリーグでは平均30分以上プレーしているので、特に懸念することはないです。もちろんワールドカップのレベルはBリーグより高くなります。八村選手がいないことで、他の選手がステップアップしないといけません。雄太はよりインサイドでの役割を担うことになるでしょう。彼だけでなく(渡邉)飛勇やマイキー(川真田紘也)も大きな鍵となります。僕が5番としてコートにいない時など、10分から15分の時間をどう対処していくのか、ローテーションなどの方法を見つけ出さないといけないです。

――確かにワールドカップの相手はBリーグよりレベルが高くなります。ただ、日本人同士のマッチアップが多い他のBリーガーと違い、ホーキンソン選手は外国籍ビッグマンとずっと対峙しています。この経験は助けになると思いますか。

僕が日本に来た1年目から年々、外国籍選手のレベルは大きく向上しています。今のBリーグでは元NBA、(欧州最高峰の舞台)ユーローリーグを経験した選手たちが増えてきていますし、今でもユーロリーグでプレーできる力を持った選手たちが少なくないと思います。例えばサンロッカーズ渋谷でチームメートになるジェームズ・マイケル・マカドゥ、ライアン・ケリーはともに元NBAで、マカドゥはウォリアーズでNBA優勝も経験しています。

今のBリーグの外国籍選手のレベルはとても高いです。彼らと毎試合マッチアップしていることは、ワールドカップでドイツ、フィンランド、オーストラリアと戦うための良い準備になっています。これまでのキャリアを通して常に能力の高い選手たちと戦ってきました。だから、ワールドカップでも大きなレベルの違いを感じることはないと思います。

――ジャズで活躍するフィンランドのエース、ラウリ・マルカネンは同じPac-12カンファレンスのアリゾナ大出身で、彼が1年生の時に対戦していますね。

大学で彼と対戦したことは覚えています。そしてNBA入り後、彼は大きく成長し、成熟した選手になりました。2016-17シーズン、僕らはPac-12のフリースローランキングでトップを争っていました。(最終的に83.5%でマルカネンが1位、ホーキンソンは83.3%で2位)。普通、フリースローランキングの上位はガードの選手です。僕らはともに4番や5番でプレーするビッグマンであり、シュート力の高さを示す良い実例になっていたと思います。マルカネンとの対戦はとても楽しみです。

「スポーツとアナリティクスが繋がるのは素晴らしいことです」

――ホーバスヘッドコーチは細かいデータを重視するアナリティクスバスケットボールを指向しています。そしてホーキンソン選手は大学時代、ビジネスアナリティクスでMBAを取得していますね。

トムとこのことについて少し話しました。アナリティクス全般が好きですが、特にスポーツに関して興味があります。MBAを取る時、最後の小論文は野球のピッチトンネル(投手が複数の球種を同じ軌道から変化させることで打者は打ちにくいという理論)に関する内容でした。エージェントのワッサーマンから、コントロールや球速、投手が投げた時と捕手のミットにおさまったときの変化に関する統計データをもらいました。ピッチトンネル、投球動作が打者にどう影響を与えるのかについて書きました。

スポーツとアナリティクスが繋がるのは素晴らしいことです。得点の期待値で3ポイントシュートの成功率が40%の場合は1.2点、2ポイントシュートの成功率が50%の場合は1.0点というように、トムがミーティングで話すPPP(Point Per Position、得点効率)や分析は僕にとっても興味深いです。ただ、アナリティスは良いものですが、すべてに依存してはいけないです。アナリティクスの数値に算出できないけど、大事な要因もたくさんあります。僕はバスケットボール選手としてそのことを分かっています。アナリティクスが好きですが、良いバランスの取り方を見つけるのが僕の仕事です。

――大学の4年間で学士だけでなくMBAまで取得するとなると、バスケットボールと勉強の両立は本当に大変だったのではないでしょうか。

大学の学士取得に必要な単位は3年間ですべて取りました。そして4年目にMBAのコースを履修しました。大学は秋学期からスタートし、冬学期、春学期で1年が終わり、夏休みの間にはサマースクールがあります。多くのバスケ選手において、サマースクールはNCAAの出場資格を満たすための補完的な意味合いでクラスを取っています。だけど、僕は3年間で学士を取るためにも、サマースクールではできるだけ多くのクラスを履修していました。

「1試合30点、40点取ることには関心がない。僕が気にするのは勝利だけです」

――高いレベルで文武両道を実践してきました。そこにはご両親がともに元プロバスケ選手で、引退後は主に学生を対象としたバスケットボールの大会やツアーを主催する会社(バスケットボールトラベラーズInc)を経営している姿を見てきたことも影響していますか。

両親はおそらく世界で最も素晴らしい仕事をしています。彼らの会社はNCAA1部のチームをバージン諸島に呼んでトーナメントを行う『Paradise Jam』を開催したりしています。彼らの仕事は大好きですし、嫉妬すらします。僕もいずれは彼らのようになりたいですが、今は可能な限り選手としてプレーを続けるつもりです。ビジネスのキャリアは待ってくれます。まだ僕は28歳で、35歳や40歳になったらセカンドキャリアを考える必要があるかもしれないですが、今はその時ではないです。

――日本に来て6年が経ち、いろいろな面で成長してきたと思います。その中で信州ブレイブウォリアーズのベテラン選手、アンソニー・マクヘンリーとウェイン・マーシャルの存在は大きいですか。

マック(マクヘンリー)、ウェインからは特にディフェンスについて多くを教えてもらいました。マックは40歳ながら、昨シーズンのリーグのベストディフェンダーの1人だったと思います。彼のオンボールでのプレッシャーは素晴らしく、自分よりサイズの大きいビッグマンにも対応できます。ウェインはゴール下の守護神で、ピック&ロールでも素晴らしい対応を見せます。フットワークに優れ、リングをしっかり守ってくれます。信州に加入後、2人と(勝久)マイケルコーチのおかげで、僕のディフェンスは大きく成長しました。

――3番から5番を守れるあなたは、2人の持ち味がハイブリッドされた選手ですね。

そう言われるのは本当に光栄です。マックは本当に多くの勝利を重ねてきた選手で、日本バスケットボール界におけるレジェンドです。勝つために何でもやる選手で、献身的で自分のスタッツを全く気にしない。僕も彼のような選手になりたいです。1試合30点、40点取ることには関心がなく、僕が気にするのは勝利だけです。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

ファンの皆さんのサポートには感謝しています。ワールドカップでは自分がどんな選手であるか、そして日本がどれだけ素晴らしいバスケットボールの国かを世界に示せることを楽しみにしています。ワールドカップに向け、引き続き応援をお願いします。