「自分らしさを忘れず、考え過ぎずにプレーしたのが良かったと思います」
男子日本代表は7月9日にチャイニーズ・タイペイ代表と強化試合を実施。3ポイントシュート21本成功と長距離砲爆発で108-86と大勝した前日に続き、第2戦は1対1での激しいプレッシャーを軸としたディフェンスで圧倒し、92-56と2日続けて余裕の勝利を収めた。
今回の連戦、チャイニーズ・タイペイは主力の多くを欠き、新しいヘッドコーチの下で始動したばかりと万全の状態ではなかった。そして日本も渡邊雄太、河村勇輝らが不在でベストメンバーではなく、今回の連戦は様々なことにトライする側面が強かった。この状況の中、西田優大は新しい部分をアピールすることに成功した一人だ。
元々、強化合宿に参加しているポイントガードが富樫勇樹、河村、テーブス海の3人だけの中、この2試合は河村がBリーグ終盤に負った故障からの回復途中であることから欠場した。そのためポイントガードが人数不足になったことで、本職は2番ポジションの西田が主に司令塔として起用された。これまでもポイントガードが2名登録だったワールドカップ予選Window4のカザフスタン戦で少しだけこなしたことはあるが、ここまで本格的に司令塔としてプレーしたのは今回が初めてだった。
慣れない役割の中、昨日の初戦では9分半の出場で3アシストを記録した一方、フィールドゴールは6本全て失敗の0得点と消化不良の形に終わった。それが今日は、持ち味である積極的なオフェンスを展開し、15分の出場で10得点をマークしている。
前日との違いについて、西田はこのように振り返る。「昨日はうまくいかなかったですが、練習ではうまくいっていた部分がたくさんあり、トム(ホーバス)さんに『リラックスして』と声がけをしてもらいました。昨日は『周りにシュートをうまく打たせないといけない』、『自分が起点になるプレーを考えないと……』など、すごくいろいろなことを考え過ぎていたのが良くなかったと思います。今日は自分らしさを忘れず、考え過ぎずにプレーしたのが良かったと思います。」
ちなみにホーバスヘッドコーチは、「西田は今回の合宿ですごく良く、MVPだと思います。昨日はあまり入らなかったけど、今日はすごく良かったです。この経験は大きいです」と評価している。
「Window1からずっとメンバーに入っているのに、本戦だけ外れるのは悔しいです」
ワールドカップ本大会まであと50日を切っており、12名のメンバー争いは最終局面を迎えている。その中で、ポイントガードという新しいチャレンジをすることは本職のポジションでアピールする機会が減るというリスクもある。だが、西田は「ポイントガードを身につければ生き残れる可能性は高まると思うので、求められることに対してはしっかり応えたいです」と、好意的にとらえている。
そして、他のガードにはないユーティリティさを自身の強みにしていきたいと語る。「本来のポジションは2番だと思いますが、去年は3番、今回は1番で出たりと、1番から3番をこなせるのが僕の強みです。それは僕にしかない持ち味だと思うので、これを生かしていきたいです」
試行錯誤の最中において、自身が目指すべきポイントガード像として参考にするのが、本職は2番ながら代表では司令塔でプレーした東海大の先輩だ。「自分の目指すイメージに近い選手でいうと(田中)大貴さんです。ただ、大貴さんはしっかりハーフコートでオフェンスで作る印象があります。僕はよりアップテンポなバスケットボールを作り出していければと思います」
そして、本職のポイントガード3名(富樫、河村、テーブス)とは違う強みを打ち出していきたいと続けた。「身長の部分に加え、ディフェンスでもアドバンテージを作る。そしてフィジカルでも貢献し、オフェンスではドライブからフィニッシュまで持っていけるところを出していきたいです」
代表のサバイバルレースは佳境を迎え、金近廉やジェイコブス晶など若手もメンバー争いに入ってきた。「最初のWindowでは最年少でしたが、今ではもう年齢では中堅くらいになっているのは驚きの部分があります。ただ、どんなメンバーになってもやることは変わらないです」
こう語る西田は、ワールドカップ予選ではチームトップの10試合出場、昨年のアジアカップも5試合出場と、ホーバス体制では誰よりも多くの試合でプレーしてきた。そこへのプライドは当然のようにある。「Window1からずっとメンバーに入っているのに、本戦だけ外れるのは悔しいです。是が非でもでもメンバーに残りたいと思います」
ホーバスヘッドコーチの求める水準にまで司令塔をこなせた時、西田の12名の代表入りの道は大きく開けてくる。日本代表がより多彩な起用法を可能とするためにも、西田の新しいチャレンジがどんな結末を迎えるのか注目だ。