明成

文=鈴木栄一 写真=野口岳彦

「怖がってしまった」ゴール下を止めきれず

ウインターカップ前年王者の明成は、ベスト8で帝京長岡に60−69で敗れ、大会を去ることになった。留学生ビッグマンを擁する相手にインサイドのサイズ不足をいかに克服するかがポイントとなった試合で、第1クォーターから帝京長岡のケイタ・カンディオウラに爆発を許し、13-23と劣勢からのスタートを強いられた。

第2クォーターに入ると、明成は守備の圧力を強めケイタにシュートを打たせず、田中裕也や木村拓郎の得点で追い上げを図る。しかし、ここで痛かったのは相手シューターの品川廉椎に3ポイントシュートを決められ、このクォーターだけで彼の2桁得点を許したこと。それでも懸命に食らい付き、32-38で前半を終える。

第3クォーター序盤、明成は田中の奮闘に加え、蒔苗勇人の3ポイントシュートによって40-40と追いつく。しかし、ここで帝京長岡のケイタ、神田龍一と相手のエースに7連続得点を許し、試合の流れを引き寄せられない。第4クォーターに入っても僅差で粘る明成だが、要所でセカンドチャンスを決められるなど、ゴール下で止めきれず。また、3ポイントシュートは36本中5本成功と最後まで当たりが来ないなど、オフェンスがジリ貧になっていく。その結果、残り約5分半に51-62と再び2桁のリードを許し、そのまま追い上げが及ばなかった。

最終的に帝京長岡のケイタは37得点26リバウンド5ブロック、さらに神田龍一に13得点13リバウンド12アシストのトリブル・ダブルを許し、相手のエースに仕事をさせてしまったのが明成にとって痛い試合となった。

明成

佐藤コーチ「勝ち負け以上に勉強したことがある」

明成の佐藤久夫コーチは、下級生が主体となったチームで強気の姿勢に欠けていた部分があったと試合を振り返る。「やっぱりまだ半熟卵。今日も言いましたが、お化け屋敷の中でバスケットをやってはダメだと。怖がってしまった。選手たちはみんな優しくて良い子ですが、コートの中ではもうちょっと変わってほしい。そこが物足りないです。出てきたお化けを脅かすくらいでないと、ビッグマンのいるチームにやっていけない。まずはメンタル的なところです」

効果的なドライブ、攻守において身体を張ったプレーで奮闘した2年生の木村拓郎は「14番(ケイタ)のディフェンスリバウンド、8番(神田)のドライブからのプレーを抑えることができなかったです。チームとして我慢する力はあったと思いましたが、爆発力が足りなかったです」と敗因を語る。

これで連覇の目標を達成できずに大会を去ることになった明成。当然、悔いが残る結果となったが、一方で佐藤コーチは次のように選手たちの頑張りを称えてもいる。「勝敗にこだわって毎日練習しています。ただ、コートの中で、やっぱり勝敗よりも大事なことを勉強しています。それは仲間のために自分が今やれることをやりましょう、ということ。そういう和を築くことはできました。勝ち負け以上に選手たちが勉強したことはいっぱいあります」

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木村拓郎「一番大事なのは自覚と責任」

「華麗なバスケットボールにも魅了されますが、それ以上に子供たちの心の結びつきが試合に出た時が一番大好きで、勝ち負け以上に感動します。そういうゲームはできました。結果がどうであれ、今までの苦労のプロセス、その背景の中において、自分たちが手をつないで頑張りきれたのはうれしいです。一緒にやったかいがありました」

そして、王座奪還に向け、来年は大黒柱としてチームを牽引することが期待される木村は、「主力としてやっていく中で、一番大事なのは自覚と責任だと思います。来年は3年生になるので、そこをもっと強めていって個人でもチームでも強くしていきたい。自分はドライブとか身体をつかってチームを活気づけ、勢いを与えていくプレーヤー。ディフェンス、リバウンドといったところをより頑張っていきたいです」と意気込みを語る。

惜しくも敗れたが『心の結びつき』というらしさをしっかりコートで表現し、今年も高校バスケファンを魅了してくれた明成。来年、今度はどんなチームで王座奪還を目指しウインターカップに戻って来るのか楽しみだ。