ステフ引退後を見据えた世代交代を断念し、優勝を目指す
ドレイモンド・グリーンはプレーヤーオプションとなっていた契約最終年を破棄してフリーエージェントとなった上で、4年1億ドル(約135億円)の契約を新たに結び、ウォリアーズに残留することになった。
彼が破棄した契約最終年の年俸は2760万ドル(約37億円)だったが、新契約の1年目は2230万ドル(約30億円)と、単年で見れば減額に応じたことになる。昨シーズンにサラリー総額が1億9000万ドル(約260億円)を超えたウォリアーズにとってはわずかな金額だが、これによりラグジュアリータックスは大幅に減らせる。それと同時にグリーンは新たな長期契約を得た。
カンファレンスセミファイナルでレイカーズに2勝4敗で敗れてシーズンが終わった直後、ヘッドコーチのスティーブ・カーは「もしドレイモンドが戻ってこなかったら、私たちは優勝候補ではなくなる」と語った。ウォリアーズにとっては、この発言で今オフの動きすべてが決まったと言っていい。ジョーダン・プールを放出してグリーンと長期契約を結んだことは、世代交代をあきらめると同時に、今のコアで絶対にもう1回優勝する、との思いが込められている。
来年オフにはクレイ・トンプソンの契約が終わり、プールとのトレードで獲得したクリス・ポールの契約は無保証となることを考えれば、現体制での5度目の優勝を勝ち取る最大のチャンスは来シーズンだ。クレイが契約延長をすると過程すれば、ステフィン・カリー、クレイとグリーンのコアはまだ数年維持できるものの、35歳のカリーはトップレベルを維持できるギリギリのラインに来ており、33歳のクレイはケガ以前のプレーができずにいる。グリーンは今回4年契約を結んだが、もともとサイズ不足をハードワークで補う消耗の激しいスタイルでやってきた選手であり、あとどれだけパフォーマンスを維持できるか疑問は大きい。
しかし、コアを維持した代償もまた大きい。少し前までのウォリアーズは、ジョーダン・プールをエースとする、パトリック・ボールドウィンJr.とモーゼス・ムーディー、ジョナサン・クミンガとジェームズ・ワイズマンのチームにカリー引退後の『王朝』を引き継がせるつもりでいた。だが、このプランはもう存在しない。
これからカリーたちが臨むのは、ウォリアーズ版の『THE LAST DANCE』だ。圧倒的な力を見せ付けてNBA優勝を果たしたナゲッツが新たな『王朝』を作ろうとしており、それに触発されたライバルたちも強化に余念がなく、西カンファレンスのレベルはかつてないほどに上がっている。ウォリアーズはそこに後がない状況で挑んでいく。成功するにせよ失敗に終わるにせよ、ドキュメンタリーの取材班を1シーズン貼り付ける価値は間違いなくあるはずだ。