文=丸山素行 写真=野口岳彦 

功を奏したマッチアップゾーン

ウインターカップ5日目、武蔵野の森総合スポーツプラザは4面のマルチコートからメインコート1面へと仕様が変わった。女子の準決勝第1試合は奥山理々嘉を擁する八雲学園を破った大阪薫英女学院と、夏のインターハイを制した桜花学園を倒した昭和学院の対戦となった。

大阪薫英は安藤香織監督が「前半は出来が悪かった」と言うように、不用意なパスやドリブルをスティールされてのワンマン速攻を連続で許すなど、開始4分で4-14と2桁のビハインドを背負った。その後は立て直したものの点差はなかなか縮まらず、25-35で前半を折り返す。

それでも「あの出来で10点なのでいけるかなとは思ってました」と安藤監督に焦りはなく、後半からディフェンスをマッチアップゾーンに変更したことで試合の潮目が変わった。

イージーシュートを打たせず、トラップからボールを奪取するなど、ディフェンスが機能する。また前半は何本もオフェンスリバウンドを許していたが、、ディフェンスリバウンドをしっかり保持しセカンドチャンスポイントを与えなかった。

「全国的には能力もないし身長もないので、マンツーマンだけでは戦えないと思っていたので準備してきました」という、このマッチアップゾーンが大いに機能し、オフェンスでも得意のドライブから得点を量産。このクォーターを24-5と圧倒し、2桁のリードを奪った。

その後は2、3ポゼッション差を行き来し、終盤に詰め寄られたが、このリードを最後まで保ち、64-61で大阪薫英が逃げ切った。

大阪薫英

キャプテン北川「自分でいかなあかん」

ドライブとミドルシュートで得点を量産し、勝利に大きく貢献したキャプテンの北川聖は、ゲームハイの22得点を記録した。それでも「周りを生かすことを意識してプレーしているので、自分で決めようとはそこまで思わない」と、得点に固執するタイプではないと説明した。

だが今回の試合では攻め気を見せた。それは自らが攻める姿勢を示すことで、チームメートの士気を上げるつもりだったからだった。「苦しい状況になっても、ずっとリングに向かったら周りも乗ってくるので。自分で行かなあかんなと思って、引かずにリングに向かい続けました」

その北川の攻め気に清水咲来も呼応した。「もらいざまのドライブというのはずっとやってきました。自信のあるプレーですし、自分で行くって決めてます」と自ら太鼓判を押すドライブで相手ディフェンスを切り裂き、清水は北川に次ぐ15得点を記録した。

また「跳ぶのが好きです(笑)。リバウンドは得意としてるので」と、小柄ながらも抜群の身体能力で9本のリバウンドを獲得した。後半にオフェンスリバウンドを与えなかったことも勝敗のポイントとなっていたため、このリバウンドの価値は大きかった。

ドライブに表れているように、彼女たちの強気さは大阪薫英の大きな武器となっている。だがその強気はオンコート限定だという。「どっちかというと優しい子が多くて、気は強くないです。みんなオラオラ系ではないです(笑)」と清水は言う。

「相手がどうとかじゃなく、自分たちのプレーを出し切って、全員でコートで暴れたいです」。清水はそう明日の決勝戦への意気込みを語った。決勝戦の相手は県立津幡を破った岐阜女子。ハディ・ダフェとイベ・エスターチカンソの留学生2人を擁し、高さの不利は否めないが、気持ちの強さでカバーし、初優勝を狙う。