田中裕也

文=鈴木栄一 写真=日本バスケットボール協会、鈴木栄一

田中裕也「練習でやってきた成果を出せれば勝てる」

12月26日、ウインターカップの前年王者である明成は男子3回戦で前橋育英に77-52で勝利。第1クォーターに21-9と2桁のリードを奪って主導権を握ると、そのまま危なげない展開で逃げ切り、順当にベスト8進出を果たした。

昨年は八村阿蓮(東海大)、相原アレクサンダー学(青山学院大)など3年生を主体としていた明成だが、今年のチームは多くの下級生がプレータイムを得ている。昨年の主力では唯一の下級生だったシューターの田中裕也が、得点源かつキャプテンとして若いチームをまとめている。下級生の多いチームだけに、昨年に比べると不安定な面があるのは否めず、佐藤久夫コーチも下級生について「信号の黄色の状態で、それが青か赤なのかは、試合でやってみないと私も分からない」と認める。

先発の加藤陸に、越田大翔、浅原紳介とゴール下を担うことになる1年生プレーヤーには「全国大会で1年生が試合に出場するのは大きなこと。多くを求めてはいないですが、責任を求めていきたいです。もっと練習でやったことを出してもらないと。下級生を大事にすると『俺らには力がある』と勘違いするところがありますが、やっぱりハートのバスケットをやってほしい。能力のバスケットはいらないよってことを1年生には教えていきたい」とハッパをかけていた。

とはいえ、そこは名将の佐藤コーチであり、今年もしっかりと優勝を狙える下地を持ったチームを作り上げてきたことは間違いない。いよいよメインコートとなる明日のベスト8では帝京長岡と対戦。3回戦の八王子学園八王子戦をオーバータイムで勝ちきって勢いに乗る相手は、この試合で37得点23リバウンドを挙げたケイタ・カンディオウラと強力なビッグマンを擁する。

ゴール下での劣勢が予想される明成ではあるが、佐藤コーチは「1人の大きい選手を持ったチームを相手に、高さでかなわなかったというバスケットの展開にだけは絶対にしたくない。だからこそ、かなわない部分をやっぱりハートで補っていくしかない。ハートのあるプレーをやってくれと言っています」と、高さに屈するつもりはない。

佐藤久夫

佐藤コーチ「能力のバスケットはいらないよ」

キャプテンの田中裕也は、帝京長岡のビッグマン対策としてセンターだけでなく、ガード陣を含めたチームとしての守りが大事になると強調する。「留学生にマッチアップすることになるのは1年生の大きい選手となります。そこでまずは、ゴール下にパスをさせないようにガードが相手を苦しめることが大事になってきます。そこをしっかりやっていけば、センター陣への負担は少なくなってくると思います」

「3年生としてチームをまとめることが大事です。点を取ってチームの流れを引き寄せたい。自分が点を取っていけばマークも厚くなる。そうなれば他の選手が簡単に攻められるので、自分が犠牲になってでもチームに貢献していきたい」と今年のエースとしての決意を語る。

また、連覇への思いを「去年は自分が試合でプレーした中で優勝しました。これを後輩に受け継いでもらわないといけないです」と語ると、「自分たちが練習でやってきた成果を出せれば勝てると思います」と締めくくった。

インサイドでの厳しい戦いが予想される中、それをどう克服していけるのか。連覇に向けた明成の戦いぶりから目が離せない。