写真=Getty Images

2007年、ドラフト48位でガソルを指名したのはレイカーズ

各チームのGMは、チームの陣容を決める役割を担っている。長くこの職に就いていれば、成功も失敗もたくさんあるだろう。その中には長く後悔した判断ミスもある。

MIT(マサチューセッツ工科大学)出身で、『マネーボール理論』をMLBからNBAに導入したことで知られるロケッツのダリル・モーリーGMは、就任からわずか1カ月後に迎えた2007年のドラフトで、26位でアーロン・ブルックス、31位でカール・ランドリーを指名した。ポイントガードのブルックスは2010年に1シーズンを通じて最も成長した選手に贈られるMIP賞を受賞したのだが、残念ながらロケッツを背負うような存在にはなれなかった。

モーリーの後悔はそこではなく、ドラフト48位でレイカーズが指名したマーク・ガソルだ。ガソルはレイカーズから指名された後、レイカーズとグリズリーズとの交換トレードでグリズリーズに交渉権が渡り、今ではNBAを代表するセンターにまで成長した選手だ。

レイカーズよりも上位の指名権を保持していたにもかかわらず、ガソルのような逸材の指名を見送った一因を、モーリーが『slate.com』に明かした。

モーリーは、「ガソルは当時22歳で、ヨーロッパでプレーしていた。当時のスカウトが、彼の上半身裸の写真を入手して送ってきたんだ。童顔で、ややだらしのない身体をしていた。それを見たチームスタッフの一人が彼を『ふとっちょ』というニックネームで呼ぶようになった。私は彼に注目していたが、自分にとって初めてのドラフトで、『ふとっちょを指名する』と言い出す勇気がなかった」と当時を振り返っている。

かくして、グリズリーズでNBAデビューの機会を掴んだガソルは、シーズンごとに着実に成長し、2012年と2015年にNBAオールスターに選出されるまでの選手となった。

結果論ではあるが、みすみす超が付く逸材を逃したため、モーリーはドラフトで指名する選手を調査する際、新たなルールを導入したという。「ガソルの成長を見てから新たなルールを自分の中で作った。『ニックネーム禁止』というルールをね」

もしロケッツがガソルを指名していたら、ジェームズ・ハーデンとガソルのデュオが見られたかもしれない。ロケッツより上位指名権を持っていたチームがガソルの指名を回避したのも、アスリートらしからぬ体型が理由だったのかもしれないが、運命とは皮肉なものだ。