「誰を生かすためにコールしているのか」の共通認識
12月23日、琉球ゴールデンキングスはサンロッカーズ渋谷との2戦目で、第1クォーターに8−24と大量リードを許し、最大で19点を追う苦境に追い込まれた。それでも後半に46-22と圧倒し、最終的には71-59で前日に続いての勝利をおさめた。
この見事な逆転劇の立役者が橋本竜馬だ。10得点4リバウンド4アシストというスタッツに加え、後半はメインの司令塔として的確なパスさばきとゲームコントロールで攻撃を牽引した。
「シュートが入らなかったのはありますが、それをディフェンスにまで引っ張ってしまいました。シュートが入らないなら、相手を15点とかに抑えられる力があるにも関わらず、24点も許してしまったのが一番良くなかったです」と橋本が語るように、第1クォーターの出遅れから前半を琉球は2桁のリードを許す。
そんな中、ハーフタイムにおいて通常なら各自でシュートを打つなどウォーミングアップに入るものだが、その前に琉球は選手全員がフリースローライン付近に集まって円陣を組んだ。「相手に流れが行っていたので、自分たちがやるべきことは何なのか、それを共通認識とするためにハドルを組んで確認しました。良い状態であれば必要ありません。ただ、自分たちの状態が悪ければ、コーチに言われる前にやらないといけない」と橋本はその意図を語る。
その効果もあったのか、橋本が主に司令塔の役割を担った後半はオフェンスが前半と変わってうまく回った。「みんなでボールを触ってパスをさばくのかシュートにいくのか、そこの判断が良かったです。そして、誰を生かすためにコールしているのか、その共通認識がしっかりできていたと思います」と語り、自身のゲームメークについて次のように総括している。
「どれだけ良い形でパスを配給できるのかを考えていました。田代(直希)選手が今日は乗っているので生かそう。ただ、彼だけになると抑えられてしますので古川(孝敏)選手、インサイドも混ぜていこうと、そこはうまくはまりました」
「シーズンは繋がっているという印象が強かったです」
昨シーズンまで在籍した三河において、橋本はコートに出ている時は常にボール運びからゲームメイクと『これぞ司令塔』という役割を担っていた。しかし、琉球においては並里成、岸本隆一と併用され、司令塔というより2番ポジション的な起用法が大半となっている。それだけに、ここまでの時間、司令塔としてプレーしたのは彼にとって久しぶりの経験だった。
この点についてスムーズに入れたのか聞くと「先日の名古屋D戦で短い時間でしたけどポイントガードをする時間があって、それがなかったらちょっと難しかったかもしれません。その5分でも自分の中では収穫があり、やっぱりシーズンは繋がっているという印象が強かったです。積み上げてきたものを今日の試合で出すことができた。それはみんなのおかげで積み上げられたものであり、そのおかげですんなり入れたので、落ち着いてゲームコントロールができたと思います」と語る。
このシーズンの積み上げは、シュートセレクションについても同様だ。この2試合、橋本は3ポイントシュートを効果的に沈めて8得点、10得点をマークと、2試合続けて得点の面でも結果を出した。これも、今週はたまたま良かった、のではなく徐々にチームの求めるシュートセレクションを理解しつつあることへの成果と考えている。
「三河時代だったら打たなかったシュートを、キングスではオフェンスの流れを良くする意味でシュートを打ってほしいと、コーチ陣から言われているところもあります。それが何なのか試合で見極めている状態ですが、自分のシュートにしつつある面はあるのかもしれないです。タフショットと良いショートの違いは、わずかな差なのかもしれません。自分の中でのシュートへの認識を変えることは難しく感じた時期もあります。ただ今はアグレッシブに、違うものもあると見付けながらでも良いセレクションができていると思います」
代名詞であるタフな守備、抜群のリーダーシップに加え今、橋本はコンボガードとしての新たな可能性も確実に広げている。彼が新たな役割を完全に自分のものとできるのか、琉球のさらなるステップアップに向けた後半戦の注目ポイントだ。
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