富永啓生

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「ドライブで魅せたい。そこには絶対的な自信がある」

ウインターカップ初日、男子1回戦では桜丘が県立広島皆実を84-75を破り、初戦通過を決めた。桜丘のエースは今夏のU18アジア選手権で活躍した富永啓生。思い切りの良い3ポイントシュートとドライブで存在感を見せた『日本のジョーカー』が、ウインターカップでも36得点とその力を見せた。

県立広島皆実も富永の実力は重々承知しており、徹底したプレッシャーを掛けて抑えようとしてきた。それを富永はかわし、強引なドライブで切り込んでは得点を奪っていく。ただ、強引すぎる嫌いもあり、ジャッジや相手、時には味方選手にもフラストレーションを見せるようなシーンもあった。

「前半みたいな形で速攻からドライブに行けず、無理やりなシュートが多くなりフラストレーションが溜まってしまいました。前半は自分がボールを持って真ん中から突破して、スクリーンをうまく使ったりできていたんですけど、それが後半できなかったのは反省です」

そうやって試合を振り返った富永は、「自分の出来は(100点満点のうち)50か40か。シュートの確率が悪かったので」と及第点以下の点数を付けた。3ポイントシュートは14本中2本しか決まらず、2点シュートも30本中13本。フィールドゴール成功率34%では満足いかないのも当然だ。しかし、自らチャンスを作り出して44本ものシュートを打ったことが富永の価値でもある。

U18日本代表での富永は自分でクリエイトもできるが、勝負強いシューターのイメージだった。だが、この日はドライブで猪突猛進。正面から割って入る超アグレッシブな姿勢は強烈な印象を残した。「ドライブで魅せたいです。そこには絶対的な自信があるので。外のシュートもあるんですけど、そればっかりじゃ止められます。そこをドライブでいかに行けるかです」

富永啓生

「自分が引っ張っていかないといけない」

強引なまでの突破を試みるのは、富永なりの責任感の表れであり、リーダーシップの示し方だ。「国際大会で経験したことはチームに生かせているし、その部分で自分が一番成長したと感じます。突破力はアジアで磨くことができて、自信に繋がっています。リーダーシップの面でも声を出すのはもちろん、自分が引っ張っていかないといけない、という気持ちを今までより強く持つようになりました」

その結果が、得点面で自分が存在感を見せてチームを引っ張るリーダーシップの形だ。「自分が得点を取らないとチームの得点も伸びないので。点を取ることに責任を持って、チームのモチベーションを上げるためのプレーも自分がやっていくつもりです」と富永は言う。

もちろん、自分のエゴだけでプレーするつもりはない。「自分、自分にはならないように」と気を付けてはいるが、行ける場面で躊躇するプレーヤーにはなりたくない。エースとしての自覚を持ち、チームが勝つためのプレーを考えている。

直近3大会、愛知県の代表は中部大学第一だった。3年生の富永にとっては最初で最後のウインターカップとなる。その大会で悔いを残さないため、チームを一つでも多く勝たせるために、富永は自慢のドライブと得点能力をフルに発揮するつもりだ。

富永啓生

「45点じゃなく、60点を取りたいです」

「チームの目標はインターハイ優勝校の開志国際に勝ってメインコートに行くことです。個人の目標としては、平均45得点を取っていきたい」と富永は言う。順当に勝ち上がれば26日の3回戦で開志国際と当たる。

もっとも、エースが45得点を取るチームであれば、目標は3回戦よりもっと上でもいいのではないだろうか? そんな質問を投げ掛けると「じゃあ45点じゃなく、60点を取りたいです」と、富永は少々トンチンカンな答えを返す。開志国際に勝つにも、メインコートでベスト8より上に行くにも、自分が60点を取ってチームをそこに連れて行く、という意気込みなのだろう。

それで言えば今日の36得点もノルマを下回ったことになる。ここから彼が徹底マークを受ける中で平均得点をどこまで伸ばすか。そしてチームをどこまで引っ張っていけるか。間違いなく『魅せるプレーヤー』である富永の挑戦がどこまで続くか、期待とともに見守りたい。