マイアミに移動した夜、ジェフ・グリーンの自宅でチームディナーを実施
ジェフ・グリーンとディアンドレ・ジョーダン。2人のベテランビッグマンは、多くの意味でナゲッツを支えている。
まずはグリーンの話から。2007年にセルティックスから指名された彼をレイ・アレンとのトレードで獲得したスーパーソニックスは、キャリア2年目からオクラホマシティに移転した。彼とケビン・デュラントは2歳違いだが同じマサチューセッツ州プリンスジョージズ郡出身で、古くからの知り合いだ。2人は同じタイミングでNBAデビューを飾り、1年目から主力として活躍してオールルーキーチームに選出されている。その関係性は、ジャーニーマンとして多くのクラブを渡り歩いたグリーンが2020年にデュラントのネッツに加わることに繋がる。
スーパーソニックスとサンダーを別のチームとしてカウントすれば、グリーンは15年のキャリアで12チームを渡り歩いたことになる。心臓疾患でプレーできない時期を乗り越え、常にコート上ですべてを出し尽くすスタイルを貫き、どこに在籍していても自分よりチームを優先した。
デュラントとカイリー・アービング、ジェームズ・ハーデンの『ビッグ3』がネッツに誕生した2020-21シーズン、デュラントは長期欠場明けでハーデンはチームに加わったばかり。個々のポテンシャルがチーム力に繋がらなかった時期、3人が犯したミスを「自分のせいだ」とグリーンが言うシーンが何度もあった。注目を集める『ビッグ3』から少しでもプレッシャーを取り除くためだ。
キャバリアーズではカイリーと、ロケッツではハーデンと一緒にプレーした経験のあるグリーンは、当時こう語っている。「僕は3人それぞれと個人的な付き合いがあり、どう接すればいいのか分かっていた。僕は人付き合いが苦にならないタイプで、チームメートがどんな人かを知るのが好きだからね」
その彼はネッツを1年で離れてナゲッツに移り、2年目のシーズンを戦っている。昨シーズンは先発だったが、今はベンチからニコラ・ヨキッチとアーロン・ゴードンを支えるのが彼の役目。堅実な働きはチームに欠かせないもので、このプレーオフも全試合に出場して平均17.9分のプレータイムを得ている。
その一方でディアンドレ・ジョーダンは出場機会を得ていない。ネッツで一緒だったグリーンに誘われてナゲッツに加入したが、レギュラーシーズンの出場は39試合、プレーオフの出番は3試合で、平均3.3分しかない。
かつての彼は、この状況を受け入れるタイプではなかった。キャリアの全盛期だったクリッパーズではもちろん、すでに衰えを見せ始めたネッツ時代(2019-20シーズンと2020-21シーズン)もプライドは高く、ケニー・アトキンソンが若いジャレット・アレンやニコラス・クラクストンを優先して起用し始めると、公然と不平を漏らした。これがアトキンソン解任の一つの要因になっているのは、指揮官が代わった途端にジョーダンが先発に戻ったことが暗示している。
当時の彼は矛盾を内包していた。自分にプレータイムを与えないコーチには不満を隠そうともしないのに、彼からプレータイムを奪う若手に対する敵意は全くなく、むしろ誰よりも親身に接したのだ。これは生来の彼の性格なのかもしれない。クラクストンはジョーダンについて「僕のメンターだ。特にディフェンス面で適切なアドバイスをくれて、経験のない僕にとっては大きな助けとなった」と語っている。
そして今、彼はこの役割を完全に受け入れている。「年齢を重ねることで、物事を受け入れられるようになる」と、レギュラーシーズン中盤の時期にジョーダンはナゲッツでの自分について語っている。「僕は今もコートに出て競い合いたい。この気持ちがなくなれば引退するよ。でも今は、チームメートにアドバイスを送り、若い選手たちが自信を持ってコートに出て、喜んでプレーできるようサポートするつもりなんだ」
ナゲッツを率いるマイケル・マローンは「DJ(ジョーダン)のリーダーシップは素晴らしい」と言う。「出場機会がなくてもチームと繋がっている。ニコラ(ヨキッチ)が良いプレーをすれば、ベンチで一番に跳び上がるのは彼であり、ベンチで一番声を出しているのは彼だ。選手たちはみんな彼をリスペクトし、その声を聞いている」
そして指揮官は、グリーンとジョーダンのリーダーシップについて「彼らベテランが模範を見せることで、若い選手たちにも責任を持たせる」と評している。
その彼らは、今回のNBAファイナルでも貴重な働きをしている。デンバーで行われた最初の2試合を1勝1敗で終えてマイアミへ飛んだ後のオフ、グリーンはマイアミにある自宅でチームディナーを開催した。第2戦に敗れた失意を引きずらず、敵地での2試合に向けて気持ちをリセットするための場だ。このイベントが第3戦の勝利に貢献したのは間違いない。
ホスト役を務めたグリーンは「もともとマイアミに移動した日の夜にみんなを招くつもりで、負けた後だったからちょっと違う意味合いになった」と言い、「素晴らしい料理を出した」と胸を張るのだが、これに対するナゲッツの選手たちのリアクションは面白い。
ジョーダンが真顔で「料理はひどかったよ」と口を挟む。楽しむための食事ではなく、シーズンで最も重要な試合を戦うアスリート向けの節制第一のメニューだったことへの文句だ。ヨキッチは「ジェフの家はすごかった」と振り返り、食事についてはコメントしなかった。
ジョーダンは言う。「メシはマズかったけど、この時期では仕方ない。集中して真剣に取り組むけど、それと同時に楽しさを忘れず極力ストレスを感じない、このチームらしいバランスの良さがあったと思う。あと、サラダだけは美味しかったよ」