ヘイウッド・ハイスミス

経験豊富なラブやゼラーはチームのためにサポートに回る

ヒートはジミー・バトラーとバム・アデバヨを中心とするチームだが、2人のスター選手を支える『脇役たち』の働きぶりも見逃せない。ダンカン・ロビンソン、ケイレブ・マーティン、ゲイブ・ビンセント、マックス・ストゥルースといった主力は揃ってドラフト外の選手。そしてプレーオフも大詰めとなったこの段階において、ヘイウッド・ハイスミスが台頭している。

ハイスミスは26歳のパワーフォワード。ディビジョン2の大学でプレーし、NBAドラフトでの指名は得られなかった。2018-19シーズンにセブンティシクサーズでNBAデビューを果たすも、出場は5試合のみで、続く2シーズンはGリーグ暮らし。昨シーズン途中に10日間契約でヒートに加入したが、これも選手が足りなくなって穴埋めに呼ばれた感じからのスタートだった。

同じ立場の選手が次々と脱落する中でハイスミスは生き残り、2年目の今シーズンは少しずつ出番を増やしてきたが、トレードデッドラインで同じポジションに経験豊富なケビン・ラブが加わるとプレータイムを失うことに。それでも腐ることなく、努力を続けられるのが彼の才能だ。

アデバヨが務めるセンターの2番手はコディ・ゼラー、ケビン・ラブからマーティンへと先発が代わったパワーフォワードでの2番手ないしは3番手というのがハイスミスの立ち位置。チームにエネルギーが足りない時に短い時間でも運動量を生かして攻守にハッスルするのが役割で、その状況が訪れれば10分以上プレーすることもあるし、そうでなければ出場なしに終わる試合もある。

それでもセルティックスとの第5戦では36分のプレータイムを与えられて15得点を記録。ナゲッツとの初戦でも23分の出場で18得点と、チームが完敗を喫する中で彼のアグレッシブな姿勢が数少ないポジティブな要素となった。早々に西カンファレンスを制したナゲッツには十分すぎるほどの準備期間があり、ヒートのオフェンスパターンを完璧に研究してきたが、ハイスミスだけは盲点だった。ゴール下のスペースに飛び込む彼にパスを合わせるプレーは全くのノーマークで、ハイスミスはフィールドゴール10本中7本と高確率でシュートを決めてキャリアハイタイの18得点をNBAファイナルで叩き出した。

不屈の闘志でアップセットを連発してきたヒートにも、NBAファイナルとなればプレッシャーはある。『プレーオフ・ジミー』の動きが重かったのも、積み重なった疲労だけではないだろう。しかし、ハイスミスにプレッシャーは全くない。彼はただこの大舞台を楽しみ、今まで努力して積み上げてきた自分の能力すべてを出すことだけを考えている。

「僕にとっては究極の舞台と言っていいと思う。でも、準備はしっかりしてきたつもりだ。これまでの人生、ずっとこのために努力してきたようなものさ。今シーズンも浮き沈みが多かったけど、僕のキャリア自体が様々な驚きの連続だったから、どんな状況であれ準備はできているよ」と彼は言う。

もう一つ挙げておきたいのが、彼ら経験のない選手を支えるベテランの姿勢だ。ケビン・ラブはベンチスタートに回っただけでなく、今では2番手としてのプレータイムもハイスミスに奪われているが、文句一つこぼすことなくハイスミスにアドバイスを送り続けている。

セルティックスとの第6戦と第7戦、そしてナゲッツとの初戦と、ラブは3試合続けて出場機会がない。それでも彼は、自分にできる貢献に尽くすつもりだ。セルティックスとのシリーズを制した後、彼は今の心境をこう語っている。

「正直に言えばプレーしたくてたまらない。準備を怠らず、コンディションも良いからね。でも、セルティックスはロバート・ウィリアムズ三世を外してスモールラインナップを採用し、それに対してヘイウッドは本当に良いプレーをした。僕は僕で、自分にできる形でチームの勝利に貢献するつもりだ」

同じくコディ・ゼラーも、プレータイムを失っていることに対してエリック・スポールストラに説明は求めたが、それで納得してチームのサポートに回っている。「僕は2月にヒートから声が掛かるまで、1年近くリーグから離れていた。チャンスをもらった時に、このチームのためなら何でもすると誓ったんだ。その気持ちは嘘じゃない」

そう語るゼラーもラブとともに、チームメートのサポートに回っている。ナゲッツとの初戦は完敗に終わったが、シリーズはまだ長い。相手の持ち味を消し、悪い流れをひっくり返すために、たとえコートに立たないとしても経験豊富なラブやゼラーはチームに貢献できるし、そんなサポートがあるからこそハイスミスのような選手は輝く。