成功の秘訣は「自分が好きで関係を築きたい人と一緒に働くこと」
ボブ・マイヤーズは2011年にアシスタントGMとしてウォリアーズにやって来て、1年後にはGMとなり、バスケットボール運営部門の社長を務めるようになった。2012年にドレイモンド・グリーンを指名し、2014年にスティーブ・カーを指揮官に据えて、2015年を皮切りに4度のNBA優勝を勝ち取った。その彼が、6月30日の任期満了を持ってウォリアーズを離れる。
「この仕事には100%を捧げなければいけない。それができないなら身を引くべきだ」と彼は退任を決断した理由を語る。
退任会見での彼は「大した仕事もしていなかった若いエージェントだった私にチャンスを与えてくれた」とウォリアーズの経営陣への感謝を語り、それは自分を支えてくれたすべての人たちへと続いた。彼は自分のフロントとしての働き方を振り返り、「GMは選手と親しく付き合うべきじゃないと言う人は多い。選手を解雇したり、希望する年俸を出さなかったりで感情的に対立することがあるからだ。しかし私は違う。どんな仕事をするにせよ、自分が好きで関係を築きたい人と一緒に働きたい」と語り、「成功の秘訣があるとすれば、それだ」と続けた。
このチームの誰であれ、何か不安や懸念があれば必ずマイヤーズに相談した。それは彼が問題解決のできる人物だからだ。ウォリアーズ内部で問題が起きた時に矢面に立つのも彼だった。ケビン・デュラントがアキレス腱を断裂した時、グリーンがジョーダン・プールを殴った時、彼が事態を収拾した。
その彼がウォリアーズを去る。『The Athletic』は、世代交代を求めるオーナーの方針に彼が納得できなかったのがその理由だと推測している。マイヤーズはスティーブ・カー、ステフィン・カリー、グリーンととりわけ強い絆で結ばれている。35歳のカリーが優勝するチャンスを追い求めるのは当然で、オーナーの要求と折り合いを付けるのは難しい。グリーンについては彼のプライドを傷付けるような減給を言い渡す、あるいはチームを去るよう伝えなければいけないかもしれない。そんなチームで結果を残すことをカーに要求し、いずれはカリーにも言いたくない言葉を伝えなければいけない。マイヤーズが自分が作り上げた『王朝』を自らの手で壊す気になれなかったとしても、それは当たり前のことだ。
ウォリアーズは4年間で3度の優勝を勝ち取った後、昨シーズンは4年ぶりの優勝を勝ち取った。コアメンバーがそれぞれ年齢を重ね、経年劣化が始まっているにもかかわらず4度目の優勝を成し遂げたのは真の偉業だ。しかし、成功を続けていく難易度は年々、そして加速度的に上がっていく。
今後、ウォリアーズの運営はオーナーであるジョー・レイコブの息子、カーク・レイコブが主に務めることになると見られる。カークは球団運営ディレクターとしてマイヤーズとともに働いてきたが、経験不足は否めないし、世代交代という方針を打ち出すこと自体、『王朝』を支えてきたメンバーとは溝を作る可能性もある。
マイヤーズの退任は『王朝』を終わらせる決定的な一打になるかもしれない。だが、10年近く勝ち続けてきたチームのサイクルが終わりを迎えつつあるのは疑いようのない事実で、新たな成功を築くためには必要な人事なのだろう。そしてマイヤーズはまだ48歳で、働き盛りの年齢だ。2018年にはセブンティシクサーズが彼の引き抜きに動いたこともある。今後について彼は何も語っていないが、オファーが殺到するのは間違いない。