サンズ

選手の良さを最大限に生かす戦い方でチームに一体感を生み出す

サンズは西カンファレンスセミファイナルで敗退すると、すぐさま指揮官のモンティ・ウィリアムスを解任しました。トレードデッドラインでケビン・デュラントを獲得して優勝が至上命題となりましたが、2年続けてエリミネーションゲームで大敗した責任を取ることになった形です。

プレーオフになると主力のプレータイムが伸びるばかりで、そこで試合の流れを変える一手を打てないなど、采配面での課題はありましたが、プレーオフに進むことすらできなかったサンズを優勝候補へと引き上げた手腕を忘れたかのような解任劇は驚きです。

2015年のドラフトでフランチャイズの将来を担うデビン・ブッカーを指名したものの、それから4年間で87勝241敗と全く勝てないシーズンが続きました。若手有望株に伸び伸びとプレーさせることを選んでも、規律がなさすぎて成長させることもできず、コート外での問題も多く、何年たってもドアマットチームから抜け出すことができないのがサンズというチームでした。

そんな中、2019年オフにヘッドコーチに就任したモンティは、以後4シーズンで194勝115敗の成績を残し、リーグで最も安定して勝てるチームへとサンズを変貌させました。最下位争いが定位置だったサンズを就任2年目にはファイナルへと導いたことで、モンティが長期政権を築くことは疑いようのない未来に思えました。

モンティが素晴らしかったのは、各選手にその長所を生かした役割を与え、これを組み合わせることでチーム力を最大化したことです。ドラフト1位のディアンドレ・エイトンにはスクリーンとゴール下の堅実さを徹底し、攻守の切り替えとハードワークで地味ながらクオリティの高さでチームを支える役割を与えました。

また、他のチームで出番を与えられなかった選手でも、モンティの手にかかればディフェンスやスピードを生かしたドライブなど一つの武器を最大限に活用して重要な戦力に仕立てられていきました。

モンティは選手のモチベーションをコントロールするのも上手く、ビハインドの状況でも各クォーターの終盤に集中力を高めて得点差を詰め、接戦に持ち込んで試合終盤に仕留める戦い方も見事でした。戦術面で特徴があったというよりは、各選手の良さを最大限に生かす戦い方でチームに一体感を生み出すのが彼の長所でした。

しかし、4年という月日が過ぎたことで、これらのモンティの良さが失われつつあったのも事実です。昨シーズンのプレーオフではエイトンを信用しきれない采配をし、そこからエイトンのモチベーションとプレー内容は物議を醸し出すものとなりました。今シーズンはクリス・ポールに新しい役割を与えたことでプレーのクオリティが落としてしまい、ここにケガ人続出が加わったことで、就任以降で初めて不安定さを露呈したのです。

さらにトレードデッドラインで『これまでのサンズ』と逆行するような動きがありました。モンティ政権下で重要な役割をこなしてきたミケル・ブリッジスとキャメロン・ジョンソンを放出し、デュラントを獲得したことで、チーム力よりも個人能力が目立つようになりました。プレーオフでもブッカーとデュラントの個人突破が中心で、モンティがこれまで作ってきたチーム力を発揮することなく敗れたのです。

デュラントは加入後にケガによる離脱が長引いたこともあり、チームとして機能しなかったことをモンティの責任にはできません。負けるのが当然だったチームを常勝チームに変えたモンティに敗戦の責任を押し付けるような解任劇は、フロントの身勝手さにも見えます。これからサンズは優勝のみを目標とした後任ヘッドコーチを探すことになりますが、競争の激しい西カンファレンスにおいては小さな失敗でプレーオフにさえ進めなくなります。モンティがいなくなっても勝てるのか、何が起こってもおかしくない来シーズンになりそうです。