平岩玄

文・写真=鈴木栄一

MVP受賞は「いろいろな人の支えがあっての賞」

今年のインカレ男子は、東海大学が5年ぶり5回目の優勝を飾った。2018年の東海大は、春のトーナメント、新人戦こそ頂点を逃したが、秋の関東大学リーグ戦にインカレを制覇。そして、この2つでともにMVPに輝いたのが平岩玄だ。

インカレでの平岩は、傑出した数字を残したわけではない。それでもゴール下で攻守に安定したプレーを披露。まさに大黒柱としてチームを支えており、納得の選出となった。

それでも、本人は「正直、全国大会のMVPはまだ早いかなという感じはします」と謙虚な姿勢。そして「自分より上手い選手はいます。同じチームでも美勇士(鶴田)さんも本当に強い選手です。そういう人たちが練習で相手をしてくれ、コーチの方たちがアドバイスをくれました。ポジション柄、自分はガードの選手がパスをくれてこその活躍です。本当に自分だけで取った賞ではない。いろいろな人の支えがあっての賞だと思います」と、周囲のサポートのおかげで取れたMVPであることを強調する。

タレント集団の東海大の中にあって、平岩は自身の役割を次のように考えている。「どこからでも点が取れるので、自分はオフェンスにおいて速攻で走ったり、ハーフコートになったら良いスクリーンをかけたり、スペーシングを取ったりする。そういうセットの流れを良くして良いシュートを打たせることを重視していました。自分が点を取れなくても、そういう仕事をやり続ければ他の選手が点を取れるのでそれをやり続けたことは誇りに思っています」

平岩玄

「自分の仕事をコツコツやっていけば評価される」

チームの優勝については「いつも通り自分たちの力を出せた結果として、こうなったと思います」と言い、大会前にしっかりとした準備ができたことが何よりも大きかったと振り返る。

「リーグ終わってからインカレに向けて戦術、気持ちの部分などの準備をしてきました。控えのメンバー、観客席で応援してくれた人たちは自分たちが彼らのことを嫌いになるまで、バチバチやってくれました(笑)。しっかり準備はできていたので、あとは自分たちがその成果をちゃんと出せるか、出せないかだけ。それで優勝に対しての不安を排除できて大会に臨めました」

専修大との決勝においても、「試合の前にコーチが『平然としろ』とみんなに言葉をかけ、気負うことなくできました。接戦になっても自分たちのバスケットボールができました」といつも通りの東海大のプレーを最後まで貫けたことを勝因にあげた。

これで名実ともに大学最強ビッグマンとなった平岩だが、チームメートのために身体を張って泥臭い仕事をすることこそが自分の持ち味であると『黒子の精神』にブレはない。「自分の仕事をコツコツやっていけば評価されると思っています。周りを気持ち良くプレーさせる。そういうところが自分の価値であり、自分の仕事だと掘り下げてやっているだけです」

平岩玄

「小さいことを積み重ねて、大きなことを達成したい」

「自分にとって体育館に行ってバスケの練習をするのは、ご飯を食べるのと同じこと。これからも小さいことを積み重ねていき、大きなことを達成できるようになりたい」と勝つことによる『慢心』も全く心配ない様子だ。

東海大の陸川章監督は平岩について、プレー面だけでなくリーダーシップも高く評価する。「彼の良いところは、日本代表の合宿や去年で言うと特別指定で琉球にいった経験を還元してくれるところです。『コーチ、こうしたらどうですか?』と、彼が得たものをどんどんチームに還元してくれて、本当に大黒柱になりました。この後も自分の経験を下級生に教えてあげたりして、後輩たちを支えてあげられるリーダーになってもらいたいです」

いよいよ来年は、平岩にとって大学ラストシーズンとなる。これからも代表、特別指定などトップレベルの経験を自身、そしてチーム全体への成長に繋げていくことで東海大の連覇の可能性はより高くなるに違いない。