文=大島和人 写真=B.LEAGUE

オン・ザ・コート「2」で滋賀の高さと強さが光る

サンロッカーズ渋谷と滋賀レイクスターズが対戦した第14節、23日の初戦はSR渋谷が滋賀に73-54と快勝している。ただそれは第12節と似た状況だった。渋谷は12月10日に91-66で大阪エヴェッサを苦しめた翌日に、78-61で敗れている。未知の相手と対戦する交流戦は、短期間でも修正が奏功しやすい。24日の第2戦は、渋谷にとって難しい試合となった。

第1クォーターはアールティー・グインの3ポイントシュート、外角からのシュートがよく決まり、渋谷が26-17とリードを奪う。しかしお互いの外国籍選手がオン・ザ・コート「2」になった第2クォーターは滋賀がリバウンドを支配し、一気に逆転する。

「課題はオフェンスリバウンドを取られたこと。それが悪循環を生み、最後まで分からないゲームになった」とBTテーブスヘッドコーチも展開を振り返る。

渋谷は短期契約のセンター、チャド・ポスチュマスがこの日はプレーしなかった。満原優樹、アイラ・ブラウンもインサイドでプレーはできるが、211cm113kgのデイビッド・ウィーバー、203cm116kgのジュリアン・マブンガが並ぶ滋賀に、高さと強さで太刀打ちするのは難しい。彼らのマークに注力しすぎると、ポイントガードの並里成が外から中に切れ込んでくる。

渋谷は滋賀の得点源を封じられなかった。第2クォーターにはマブンガ、並里が8得点ずつを記録している。満原は並里への対応について「ボールを止めながら、ディフェンスがしっかりスピードを落とさせながらつければよかった」と反省するが、インサイドに気を使う中では難しい部分もあったに違いない。

第3クォーターは10分間でリードチェンジ8回というつば競り合いになる。渋谷はブラウンが積極的にリングへアタックして7点を挙げ、アキ・チェンバースも10分間で6得点。3ポイントシュートがなかなか決まらずに苦しんでいた滋賀も、長谷川智伸が立て続けに3ポイントシュートを2本決めて食い下がる。渋谷が59-58という微差ながらリードを奪い返して、試合は最終クォーターに入った。

「健太が『自分に任せてもらっていいですか』と言ってきた」

渋谷は第4クォーターの出だしが悪く逆転され、一時は6点ビハインドまで差が開いた。ただ渋谷は第3クォーター途中からコートに戻った広瀬健太が、チームの『エンジン』になった。

35歳のベテラン、清水はこう明かす。「健太が『自分に任せてもらっていいですか』と自ら言ってきた。前々から健太と話す中で、もっと自分のエゴを出していいと思っていた。『俺にやらせてくれ』という姿勢は好きだと伝えていた」

広瀬もこう振り返る。「自分から何かプレーを起こそうということを考えて、それが結構効いていたところがあった。自分がピック&ロールを呼んで、そこから切り崩してプレーを起こす。フィニッシュに行くのかパスをするのか。そこは自分でやらせてほしい、そういう時間になったらボールを預けてほしいということは(ベンドラメ)礼生と(清水)大志郎さんに言いました」

守備も滋賀に対して少しずつアジャストを見せた。相手の動きの予測や、ボールを持たせる位置といったディテールに改善があった。広瀬はこう説明する。「ウチのインサイドがそんなに強くないのもあったと思うんですけれど、そこで何本かマブンガにやられた。ただ、そこからアジャストして何本か止められたことが良かった。付いている選手のポジショニングだったり、周りの選手のカバーだったりが良くなった」

ラスト1分の攻防、我慢して戦い切ったSR渋谷に軍配

渋谷は残り6分47秒、グインが3ポイントシュートを決めて65-68と点差を詰める。5分34秒にはブラウンがドライブからジャンプショットを決め、バスケットカウントのフリースローも決めて試合は68-68のタイ。そして残り4分39秒、広瀬のバウンドパスからベンドラメ礼生が決め、渋谷が70-68とアドバンテージを得る。

滋賀も残り3分15秒に並里成がインサイドに切れ込み、レイアップを沈めて同点に追いつく。試合はそこから2分以上も膠着状態が続いた。勝負を分けたのは残り1分を切ってからの攻防だった。

渋谷はまずブラウンが並里のドリブルに手を伸ばしてボールをブロックし、並里が苦しい体勢から拾い直して投げたパスを満原がスティール。そこから清水が速攻に出てファウルを誘った。残り52秒、清水がフリースロー2本を成功して渋谷は72-20とリードを取り戻した。

広瀬も残り39秒、残り3秒と勝負どころでディフェンスリバウンドにも絡み、渋谷は身体を張って滋賀の反撃を封じた。広瀬は残り2秒で相手のファウルプレーから得たフリースロー2本のうち1本を沈めると、ウィーバーが最後の望みを託して投げたスローインもスティール。31歳のスモールフォワードは、冷静な守備でも勝負どころを支えていた。

渋谷が73-70で逃げ切り、滋賀に連勝。「内容に関しては正直それほど良くはなかったんですけれど、しんどい時間帯に我慢して戦い切ったところが大きかった」とテーブスヘッドコーチも胸をなでおろす、そんなシビアな試合だった。来週末に試合が入っていない渋谷にとって、これが今年最後のリーグ戦。チームは14勝13敗と何とか勝ち越して、2016年を締めることになった。