トレイ・ヤング

「どんな困難も打ち勝てば黙らせられる」

セルティックスに1勝3敗と追い詰められたホークスが、敵地での第5戦で鮮やかな逆転勝利を飾った。

デジャンテ・マレーを出場停止で欠いたこの試合、ホークスは第2クォーター途中に突き放され、その後は常に10点前後のビハインドを背負うことに。それでも後半はほぼ出ずっぱりのトレイ・ヤングがオフェンスを牽引し、第4クォーター途中から点差を詰めていく。

残り4分半からジョン・コリンズの連続得点、そしてヤングの3ポイントシュート連発で、残り3分を切ったところで同点に追い付く。勢いはホークスに移っていたが、セルティックスもロバート・ウィリアムズ三世やデリック・ホワイトが渋い働きを見せ、一気に崩れはしなかった。

こうして迎えた残り7.1秒、1点ビハインドの場面。タイムアウトを取ったホークスは、当然のようにエースのヤングに最後の勝負を託した。

巧みな動き出しでボールを受けたヤングは、マークするジェイレン・ブラウンに全く気を取られることなく、3ポイントラインの手前からシュートを放って決めた。これで119-117と逆転したホークスが、敵地で貴重な1勝を挙げている。

「1点差だったから、本当はレイアップを狙っていたんだ」と、トレイは決勝3ポイントシュートの場面を振り返る。「ディフェンスも僕のレイアップやフローターを警戒していたと思う。だから下がってボールを受けて、あとはこれまでやってきたことを信じて打つだけだった。僕はこれまでのキャリアで何度もこういう瞬間を経験してきたし、そのための練習を一生懸命やってきた。だから僕は恐れない」

それと同時に、彼はチームへの感謝も忘れなかった。「多くのシュートを打ってきたけど、もっともっとやらなきゃいけないと思っている。チームメートも同じことを僕に期待していた。僕一人でやっているわけじゃない。チームメートの『思い切って打っていけ』という言葉はとても大事なんだ。僕はこのチームのリーダーだけど、周りの選手の助けも必要としている。今日はみんなが助けてくれた。だからこそ頑張れたんだ」

マレー不在の状況で、ジョン・コリンズが22得点、ボグダン・ボグダノビッチが18得点を記録。それでもやはりチームの絶対的な柱はヤングで、アリーナ中の注目を集めることになった。敵地のTDガーデンで、彼を侮辱するような声も多数飛び交ったが、「試合中は全く気にしていない。何かを言われるのは敬意の証だと受け止めているよ」と答えている。

逆に、彼らを黙らせることに喜びを見いだすのがトレイ・ヤングという選手だ。クラッチシュートを決めて敵地のファンを黙らせることを「気分が良いね」と話す。「でも、相手チームのファンを黙らせたいとか泣かせたいわけじゃない。僕はチームが勝つことを望んでいるだけさ。結局のところ、どんな困難も打ち勝てば黙らせられる。そうすることに僕は集中したいんだ」

逆転のディープスリーが決めた瞬間、ヤングはさすがに興奮した面持ちになりかけたが、すぐに両腕で自分の身体を抱きしめるお馴染みのポーズを取った。アイス──静まり返るボストンのファンとは対照的にチームメートは歓喜の渦にあった。ジョン・コリンズは試合後の会見でも興奮覚めやらぬ表情でこう言っている。

「僕らはみんな『アイス・トレイ』の時間だと分かっていた。ビッグショットを決める男さ」