ゲームハイとなる22得点をマークし、来日した家族に勝利を届ける
4月12日、東地区首位の千葉ジェッツは、ホームで秋田ノーザンハピネッツと対戦。堅い守備とトランジションオフェンスで主導権を握ると、最後までリードを譲らず84-68で勝利した。
今節は、第29節から欠場している佐藤卓磨に加えて、平均16.5得点のヴィック・ローも不在とロスターが少なく、苦しい状況だった。それでも、ゲームハイとなる22得点を挙げたクリストファー・スミスを筆頭にジョン・ムーニー、ギャビン・エドワーズらビッグマンが得点を重ねて勝利を手繰り寄せた。また、3ポイントシュートを2本沈めた小川麻斗や、外国籍選手に対して好守を見せた荒尾岳などベンチメンバーの奮闘も目立ち、ジョン・パトリックヘッドコーチは、この日のローテーションについてこう振り返っている。
「ローテーションメンバーが少ない中、麻斗やクリス(スミス)がいつもより長く出場しました。特にクリスは、みんなが知っているシュートだけではなく、ディフェンスやリバウンドでも活躍してくれたので、チームのコンフィデンス(自信)が上がると思います。岳も、相手の外国籍選手に対して胸を張って守り、ターンオーバーを誘いました。ディフェンスもこの試合で良くなったと思います」
指揮官が話すように、今節はディフェンスの向上が見られ、平均77.9得点の秋田を68点に抑え込んだ。この試合の前に行われた9日の仙台89ERS戦で96失点を喫していただけに、異なる相手とはいえ直後の試合で修正できたことは、チャンピオンシップに向けて大きな収穫となった。「先日の仙台戦で、相手が点を取ってほしいと考えている選手にボールを渡してしまい、点を取られすぎました。今日は、秋田のゴートゥガイ(勝負どころでボールを託される選手)が(スタントン)キッド選手でしたが、原(修太)選手がマークしていた時間は簡単に得点できていなかったと思います」
仙台戦の37得点に続いてゲームハイの得点を挙げ、パトリックヘッドコーチも攻守両面を称賛したスミスは、「良い試合でした。プレーオフに向けて良い流れを作れたと思います」と振り返り、好パフォーマンスの要因に家族の存在を挙げた。「チームのためにプレーしたことに加えて、今家族が来日していて、彼らの前でも良い勝利を見せることができれば良いなと思っていました。ここでの環境が素晴らしいことも話して、日本のバスケに家族も喜んでいました」
チームとの信頼関係で成り立つ第3クォーターのブザービーター
スミスは、現在リーグの3ポイントシュートランキングで3位(成功率44.8%)につけており、1試合平均2.7本成功と、リーグ屈指のシューターとして千葉Jを牽引している。また、3ポイントシュートだけでなく、フィジカルを生かしたドライブからの得点や、狙いすましたスティールからのダンクなどバリエーションは豊富だ。この日も、トランジションオフェンスに走ったり、自身より18cmも高いスティーブ・ザックのシュートをブロックするなど攻守両面で活躍を見せた。
豪快なプレーでチームを盛り上げるスミスだが、この日最も会場を沸かせたのは第3クォーターのブザービーターだった。ラストポゼッションでボールを受けたスミスは、相手陣内へボールを持ち込むと、時間を使いながらボールをコントロールし、フロントチェンジでマークについていたケレム・カンターを揺さぶり3ポイントシュートに成功。『バスケットLIVE』の実況、解説陣も「分かっていても決めてくる」、「役者ですね」と大絶賛だった。
今回の試合に限らず、ラストポゼッションで出場して3ポイントシュートでクォーターを締めくくることが多いスミスは、チームとの信頼関係があってこそのプレーだと強調する。「チームメートから信頼されていますし、僕もチーム全員を信頼しています。信頼関係はこのチームにとって一番大事なことでもあります」
そして、今回のブザービーターの裏側を次のように語った。「あのプレーは、基本的には(富樫)勇樹にパスを回す状況でしたが、お互いに目を合わせて『ここはクリスが打つんだな』って考えてくれたと思います。そして、決めることができて、また目を合わせてお互いに『良かった』って感じでしたね」
昨シーズンの加入から持ち味を発揮し続けているスミスは「(3ポイントシュート)ランキングは、あまり見ないようにしている。確率よりも勝つことの方が大事だと思っています」と、あくまでもチームの勝利だけを見つめている。そして、他チームの結果次第では、今週末の連戦で地区優勝が決まる大事な戦いが続く中、スミスは次のように意気込んでいる。「コートに立っている時間にベストパフォーマンスを発揮することが大切です。ここからもコンディションを高めていきますし、ちょっとしたケガを治します。シーズン終盤に向けて、40分出場しても常にベストなパフォーマンスを出せるようにしていきたいです」
強力な個人技を持ちながらもチームファーストで戦い続けるスミスが、千葉Jの地区優勝、そしてチャンピオンシップ制覇に欠かせない存在であることを、あらためて感じさせる今回の試合だった。