杉本天昇

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

杉本「インカレに懸ける思いはチームの中で一番」

インカレ3日目、日本大は九州共立大を90-51で下した。結果を見れば、関東1部リーグの実力を見せつけた形となったが、序盤はシュートタッチに苦しみミスも多く、決して盤石ではなかった。3年生の松脇圭志も「初戦の難しさはあって、出だしから速攻が出せなくて、結構ミスが多かったです。第1クォーターが響いて後半まで続いてしまった」と勝利を手放して喜べていないようだった。

松脇は第一クォーターで2つのファウルを犯すなど、笛に苦労した面もあった。それでも3本の3ポイントシュートを含むチームトップの15得点を挙げて、勝利に貢献した。

松脇は試合の終盤や大事な場面でシュートを沈める『クラッチシューター』としての能力を有するが、フィジカル負けしないディフェンスにも定評がある。それは3×3日本代表に選ばれ、今夏に行われたアジア競技会での経験が大きいと語る。「ポストの守り方は以前よりは対応できるようになりました。スリーバイは簡単に笛が鳴らないので、そこは成長しました」

そして、ケガのため秋のリーグ戦を半分以上欠場した2年生エースの杉本天昇も昨日の試合では元気な姿を見せた。「ケガの状態は良いんですけど、リーグ戦に全然出れず、試合感覚が完璧ではないので」ということだったが、ベンチから登場するやいなや得意の3ポイントシュートを決めるなど、20分のプレータイムで13得点を記録する効果的な働きをした。

杉本はリーグ戦に貢献できなかった責任感もあり、インカレへのモチベーションは極めて高い。「リーグ戦では悔しい気持ちのまま終わってしまいました。このチームでずっと長くやりたいという気持ちもあるし、インカレに懸ける思いはチームの中で一番だと思います」

松脇圭志

松脇「ベスト8の壁をここで消したい」

日本大は208cmのシェイク・ケイタがインサイドの要ではあるが、上位進出のためには松脇と杉本の得点力がカギとなる。そしてこの2人は土浦日大高校の先輩後輩という関係であり、先述した3×3日本代表でもチームメートだった。アジア競技会で足を負傷した杉本に対し「天昇のためにも絶対に勝とう」というコメントを松脇は発していた。

「高校から長い時間やっていますし、いる位置とかも分かってくれるので一緒に出た時は一番やりやすいです」と松脇が語れば、「あまり練習しなくても、『ここに出せばいいだろう』って分かる感じなので」と杉本も言う。

「点を取るのは天昇のほうがうまいと思うので、エースは天昇かと。自分はそういうのにこだわらずにオフェンスもディフェンスも両立したいと」と先輩が大人な発言をすれば、「バスケ面では尊敬というか、見習いたいくらいのシュート力なのでそこは見習っています」と後輩も先輩を立てる。

体育会系の上下関係は厳しく、名門校であればあるほどその度合いは強い印象がある。だが「あいつは僕のことを先輩と見てないので(笑)」と松脇が言うように、コートを離れれば先輩後輩の関係性はなくなり、「私生活では友達感覚ですね(笑)」と杉本も悪びれない。ひと昔前であれば、先輩に対し「友達」とは口が裂けても言えなかっただろうが、このフラットな関係性がチームの結束力に直結するのかもしれない。

「ウチは勢いのあるチームなので、応援席にいるみんなで一致団結する、その団結力を見てほしいです」という杉本の言葉からも、それが分かる。

日本大はこの後ベスト8を懸け、近畿大と対戦する。12回の優勝回数を誇り、4年連続65回目の出場と強豪の日本大だが、近年は2回戦を突破できずにいる。

「日本一を目指しますが、まずはベスト8の壁をここで消したい」と言う松脇。その悲願の達成には、相思相愛な先輩後輩コンビの力に懸かっている。