ジョシュ・オコーギー

相手のエースを止める守備で、NBAの世界で成り上がるチャンス

トレードデッドラインでケビン・デュラントを獲得し、一気に優勝への道がひらけたかに思えたサンズですが、デュラントは3試合に出場しただけでケガにより離脱。チームも失速してしまいました。デュラントさえ戻ってくれば解決するとはいえ、ここ数シーズンのサンズは主力を欠いていても粘り強く戦って勝機を見いだしていただけに、今の停滞ぶりは意外です。

最大の要因はミケル・ブリッジズやキャメロン・ジョンソン、そしてジェイ・クラウダーといったディフェンスに強い選手が抜けたことにあり、昨シーズンにはリーグ3位だったディフェンス力は大きく低下しました。それでもケガ人続出やトレードでチャンスを得たジョシュ・オコーギーが台頭し、今ではディフェンスの中心を担っています。

2018年のNBAドラフトの1巡目20位でティンバーウルブズに指名されたオコーギーは、ルーキーシーズンからディフェンダーとして卓越した能力を発揮しました。強靭なフィジカルでドライブを止めるだけでなく、抜かれても身体の反転が早く、後ろからブロックする跳躍力にも秀でており、ペリメーターディフェンダーとしてもリムプロテクターとしても活躍するポテンシャルがありました。

一方でガードとしてのスキルは低く、何よりあまりにも決まらない3ポイントシュートが悩みの種でした。シュート力の改善はその後も見られず、次第に出番を減らしていき、4年目の昨シーズンはアンソニー・エドワーズやジェイデン・マクダニエルズに押し出され、わずか平均10.5分のプレータイムに留まってしまいました。

5年目の今シーズンにサンズへ移籍するも、序盤戦では満足なプレータイムを得られませんでした。しかし、ケガ人が増えてきた12月から次第に実力をアピールできるようになり、ブリッジズとジョンソンがトレードで放出された2月以降はスターターとして30分近いプレータイムを確保するようになりました。安定したプレータイムを得られるようになって焦らず打てるからか、課題だった3ポイントシュートもスターターで出れば35%近くを成功させています。

オコーギーのディフェンスはマンマークが最大の強みで、相手を追い込む強靭なフィジカルと粘り強いチェイスが持ち味ですが、その反面、オフボールでのポジショニングや駆け引きは得意としていません。自身はマンマークに集中し、周囲がチームディフェンスで支えてくれる形で最も力を発揮する選手であり、マンマーカーを活用するサンズはまさにオコーギーに適した環境でした。

オールスター以降、サンズのディフェンスレーティングはオコーギーがコートにいると110ですが、ベンチに下がると118と一気に悪化します。デュラントというスーパースター獲得の代償としてディフェンダーを減らしたサンズにおいて、オコーギーがチームの浮沈を握るようになりつつあります。

プレーオフになるとエースの個人技に頼る展開が増えてくるだけに、それを止めるディフェンダーの重要性も増してきます。デビン・ブッカーやデュラントがいるサンズにオフェンスの問題は小さいだけに、オコーギーに頼ることになるディフェンスが勝敗に直結してきます。オコーギーにとってもNBAの世界で成り上がるチャンスが巡ってくることでしょう。