新戦力を試したことで、反撃を受けるも大量リードを生かして逃げ切り勝ち

琉球ゴールデンキングスは3月15日、ホームで西地区上位対決となる名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦に79-74で競り勝った。この試合、名古屋Dは代表ブレーク前から戦線離脱している張本天傑に加えて齋藤拓実、伊藤達哉、レイ・パークスジュニアと主力が相次いで欠場。満身創痍の相手に対し、琉球は序盤から強みであるゴール下を起点に得点を挙げて、前半に2桁のリードを奪う。

後半に入っても琉球のペースは続く。齋藤と伊藤の両ポイントガードを欠くことでゲームメークに苦しむ名古屋Dに対し、激しいプレッシャーでボールムーブを停滞させてタフショットを打たせる。そして、ディフェンスリバウンドからトランジションを連発して得点を重ね、第3クォーター終了時点で66-45と大量リードを奪う。

だが、第4クォーターに入ると琉球は大量リードしたこともあってか、守備の強度が緩んでしまう。また、カール・タマヨ、渡邉飛勇とまだチームにフィットし切れていない新戦力の2人を起用したことで、悪い流れを断ち切ることができない。最終的には岸本隆一がここ一番で3ポイントシュートを決めるなど中心選手の踏ん張りで逃げ切ったが、第4クォーターだけを見ると13-29と圧倒される後味の悪い終わり方となった。

一方で、チームのさらなる成長の鍵となるタマヨ、渡邉の若手ビッグマンたちに実戦経験を積ませながら、内容はどうあれ勝ち切れたのは大きなプラス材料だ。琉球の桶谷大ヘッドコーチは、次のようにタマヨ、渡邉の起用について語る。「これからも水曜ゲームがある中、2人をチームにフィットさせないといけないです。3ビッグを使うチームもある中、まずタマヨを3番として起用する。そしてビッグマンがファウルトラブルになった時、飛勇は絶対必要になってきます。21点リードで第4クォーターに入って、ここまで詰められてはいけないゲームでした。ただ、2人が長い時間出場できたのは収穫です」

「自分の名前が呼ばれた時の歓声は、他では味わったことのない気持ちになりました」

若手にチャンスという部分では、試合終了間際に特別指定選手である開志国際高の平良宗龍が待望のBリーグデビューを果たし、大きな盛り上がりを見せた。沖縄出身の平良は中学時代に琉球のU15に所属し、中学3年時には飛び級でU18に参加していた期待の逸材だ。開志国際でも1年生にして主力を担い、昨年のウインターカップ決勝戦で得意の3ポイントシュートを爆発させ、同校の大会初制覇に貢献したのは記憶に新しい。

残り26秒でコートに入った平良は、ファーストタッチで3ポイントシュートを放つが惜しくも外れ得点とはならず。だが、わずかな時間でも会場を沸かせたように、彼の持ち味の一つであるスター性を示すデビュー戦となった。

「コートに入る際、自分の名前が呼ばれた時の歓声は、他では味わったことのない気持ちになりました。小学生の時からキングスを見てきたので、この舞台に立てて感激しました」

このように待望のBリーグデビューについて語る平良は、次のように自身のプレーを振り返る。「本当に緊張しました。コートに入った瞬間は気楽でしたが、シュートを打つ瞬間は焦ってしまった。決め切れるのかという心配が勝ってしまって自分のシュートをうまく打てなかったです」

試合終了後もしばらくの間、平良の表情には笑顔はなく、悔しさを押し殺す表情をしていた。そこには高校1年生とは思えない彼の強い気持ちがある。「ただ、コートに立っているだけではダメだと思っていました。出る機会をもらえたら積極的にシュートを打っていこうと決めていました。そのチャンスがあったのに決められなかった。コートに立てたうれしさよりも、決め切れなかった悔しさの方が上です」

ちなみに平良が桶谷ヘッドコーチから呼ばれ、サイドラインで待機していた時は3ポゼッション差のセーフティリードだったが、そこから彼がコートに立つ時には5点差に。残り26秒とはいえ、1つのミスで何が起こるのか分からない油断できない状況になっていた。

だからこそ、桶谷ヘッドコーチは「26秒で5点リードの場面で出すのは早かったです。だから宗龍を含めた選手たちに謝りました」と、交代のタイミングについて反省していた。また、8000人を超える観客の中でのデビュー戦でシュートを打ち切れるメンタルの強さを讃える一方、平良の将来性を高く評価しているからこそ次のように語る。「シュートを打ち切るメンタリティは素晴らしいものがあると思います。ただ、点差と残り時間を考えると、あそこはシュートを打たずにボールをキープする場面でした」

高校1年生にトップカテゴリーのデビュー戦で冷静な状況判断を求めるのは酷かもしれない。だが、平良は10代の内からトップレベルで活躍できる選手を目指しており、そのためには今回の件も教訓にしないといけない。そして彼は、この高いハードルを課すに値する才能の持ち主だ。今回の特別指定期間中にプレーするチャンスは残されているため、次こそは適切な判断でしっかりシュートを決め切る姿を期待したい。