田代直希

桶谷ヘッドコーチ「今の段階でまだ日本一になる力がなかった」

琉球ゴールデンキングスは天皇杯ファイナルで千葉ジェッツ相手に76-87で敗れ、Bリーグ誕生以降で初のタイトル獲得を逃した。試合は序盤から千葉Jの3ポイントシュートと機動力を生かしたリーグ屈指の強力オフェンスを食い止められずにリードを許す。ビッグマンのギャビン・エドワーズを故障で欠くことで生まれたサイズの優位を生かそうとインサイドアタックを重点的に行うが、千葉Jのトラップや個々の身体を張った激しいディフェンスに苦しめられ、思うように攻められなかった。

また、インサイドにボールを入れてからのキックアウトで3ポイントシュートを打ててはいたものの、素早いボールムーブからリズムよく打てていないこともあり34本中9本の成功に留まった。そして、ターンオーバー数で15-8と千葉Jの倍近いミスを喫したように、守備から流れを変えることもできず、これといった打開策を見いだせなかった。すべてのクォーターで相手にリードを許したこともあり、桶谷大ヘッドコーチが「自分達には今の段階でまだ日本一になる力がなかったと率直に思います」と、力負けを認めざるを得ない内容だった

攻守ともに自分たちの本来の力を出せなかった琉球だが、キャプテンの田代直希は特にディフェンス面を敗因に挙げる。「ディフェンスで自分たちの目指すものが表現できなかったのが、少し残念でした。負けた要素は複合的で一つではないと思いますが、ディフェンスの完成度がすごく低かったように感じます」

中でも田代は、個々のハードワークをうまく連動させチームとして質の高いディフェンスを遂行する部分で課題が浮き彫りになったと見ている。「『この選手にはこれをやられたくない』というところでの対応が、後手後手になってしまいました。チームとしてどう守るのかは、今後追及していかないといけない課題かなと思います」

また、先述の通り千葉Jはリーグ随一のビッグマンであるエドワーズが故障欠場していた。田代は「彼がいた方がやりにくくかったと思います。僕らに分があったはずでした。千葉の選手はかなり泥臭くアグレッシブにプレーし、個の力で打開されてしまいました」と、自分たちに有利な状況でも勝てなかったと力不足を認める。

田代直希

故障を乗り越え初のファイナル出場「コートに立てたので僕的には一歩前進できた」

琉球にとっては昨シーズンのBリーグファイナルに続き、悲願のタイトル奪取まであと1勝に迫りながらの敗戦となった。Bリーグ誕生当時から常にタイトル争いに絡んできた千葉Jと比べ、大一番での経験値の違いも大きかったと田代は振り返る。

「千葉さんはBリーグ、天皇杯のファイナルが今回で8回目と、2回目の僕らと圧倒的な差があって、ファイナルの場数を踏むことが何よりも大事だと思います。また、千葉さんはここで3回負けています。この経験が彼らを強くしていることは間違いないと思います。僕たちも負けが成長の糧になることを信じて、しっかりリーグ戦に繋げていくことが大事です」

大きな悔しさ、失望を味わう結果になったが、それでもこの試合は琉球にとって貴重な経験になった。なによりも、琉球に加入直後のbjリーグ最後のファイナル、昨シーズンのBリーグファイナルをともに故障でベンチから見守るしかなかった田代にとっては大きな一歩だ。

「これまでファイナルの舞台を目指してやってきて、叶わなかったのが僕のキャリアでした。それが今回、コートに立てたので僕的には一歩前進できたかなと思います。何よりも琉球にとってなじみの深い有明で、みんなの声援を受けながらプレーできたのはとてもうれしかったです」

優勝以外、2位も初戦負けも同じ結果という考え方はある。だが、一方でファイナルの負けでしか得られない経験、悔しさは確かに存在する。田代が強調したようにこの負けを成長の糧にできるかどうかは、琉球が西地区の激しい上位争いに勝ち残り、2年連続のBリーグファイナル決勝に進むための大きな鍵となってくる。そして、誰よりも俯瞰的な視点でチームを見ることができ、故障から徐々にコンディションを戻している田代の存在は琉球のさらなる進化に欠かせない。