エドワーズが活躍するかどうかが勝敗に直結する戦い方へ
ティンバーウルブズはカール・アンソニー・タウンズの離脱もあって12月まで16勝21敗と苦戦しましたが、年明けからトレードデッドラインまでを14勝7敗の好成績で駆け抜け、一気にプレーオフ圏内に上がってきました。しかし、好調であったにもかかわらず、チームで2番目の得点源になっていたディアンジェロ・ラッセルを放出し、その後は4勝6敗と苦しんでいます。
戦力ダウンとなったトレードでしたが、その結果とは裏腹にオフェンスの狙いは明確になっています。例えば、チーム全体のパス数はトレード前後で0.4本しか差がないものの、ラッセルと新加入のマイク・コンリーを比較すると10本も減りました。ポイントガードとしてオフェンスを構築する能力はラッセルの方が上でしたが、テンポ良くボールを散らすコンリーのリズムがチームメートのパスを促すことに繋がり、オフェンスのバランスは向上しています。
ラッセルはパサーとしてもシューターとしてもオフボールの動きを使うのが上手く、複数のスクリーンを絡ませてマッチアップの変更を促したり、ギャップとなるスペースを生み出しては流動的にポジションを動かしていくオフェンスを構築しました。ただ、相手ディフェンスを混乱させる複雑なプレーでチームメートも混乱していた印象がありました。それに対してコンリーはパッシングを促すだけでなく、コーナーでスペーシングをしていることも多く、ウルブズはシンプルな個人のアタック能力を前面に出すようになり、ドライブの回数が8.8回も増えています。
トレード以降はチーム全体で連動していく崩しは減ったものの、ドライブとパスが連続する『分かりやすい』オフェンスになりました。それは同時にアンソニー・エドワーズが個人能力で試合を決めてくれると信じたチーム方針の変更にも見えます。エドワーズにすべてを託すような形ではないにせよ、圧倒的な突破力を持つエドワーズの怖さがあってこそ機能する形です。
鋭角な切り返しとフィジカルの強さで飛び込んで来るエドワーズのドライブは、常識では考えにくいコースを突破してくるため、カバーリングを難しくさせます。その一方で、ディフェンスとの駆け引きやダブルチームへの対処には課題があり、何よりドライブばかりではオフェンスが単調になります。ラッセルはオフェンスに変化をつけたり、エドワーズのマッチアップが楽になるようなプレーメークをしていましたが、今のエドワーズにはどんな選手が相手でも突破する個人技が求められるようになりました。
トレード以降、エドワーズの得点は0.5点増えましたが、チームの平均得点は3.2点減っており、ラッセルがいなくなった分を補うまでには至っていません。それでも前を向きたくなるのは、チームを強烈に引っ張り上げてくれると信じられるだけのポテンシャルと成長をエドワーズが見せているからです。
エドワーズが活躍するかどうかが勝敗に直結する戦い方へとシフトした中、エドワーズはチームをプレーオフに導くことができるのか。自身がスーパースターであることを証明する残り14試合になりそうです。