ジェイデン・アイビー

指揮官ケーシー「試合の中でどれだけ自分をコントロールできるか」

試合の終盤になっても点差が離れない接戦で勝敗を分けるのは、一つの判断、一つのミスだ。経験豊富な選手であれば切羽詰まった状況でも冷静な判断ができる。勝っているチームであれば際どい状況でもパニックに陥らない。しかし、15勝48敗で東カンファレンス最下位に沈むピストンズの、まだルーキーのジェイデン・アイビーにとっては、決して簡単なことではない。

現地3月1日のピストンズvsブルズは、ブルズのザック・ラビーンとピストンズのボーヤン・ボグダノビッチが互いに譲らずに得点を重ねる展開となった。ピストンズは最大21点のビハインドを背負いながら第3クォーター終盤から第4クォーターにかけて猛反撃に出て、1ポゼッション差の接戦に持ち込む。

残り9.1秒、112-114と2点ビハインドでの最後のポゼッション。インバウンドパスの出し手となったアイビーは、パスの出しどころがなく5秒バイオレーションを取られる恐れがあると判断して、タイムアウトを使って仕切り直そうとした。レフェリーにタイムアウトを要求したのだが、その瞬間にチームメートとヘッドコーチのドウェイン・ケーシーは頭を抱え、天を仰いだ。ピストンズにはもうタイムアウトが残っていなかったのだ。

存在しないタイムアウトを要求したためにテクニカルファウルを取られ、ブルズにフリースローが与えられる。ラビーンがこれを落ち着いて決め、さらにブルズのポゼッションでのゲーム再開となる。この時点でピストンズに勝機は残っていなかった。

アイビーが落胆していたのは言うまでもない。昨年のNBAドラフトで1巡目5位で指名されたアイビーは、ここまで58試合に出場。平均30.1分のプレータイムを得て15.4得点、3.9リバウンド、4.6アシストと再建中のピストンズで大いに奮闘している。だが、デビューから積み重ねた良いプレーをすべて吹き飛ばすほどインパクトの大きなミスを犯してしまった。

試合後の会見で指揮官ケーシーは「ディフェンスから良いバスケをして追い上げたのに、ミスで高い代償を払うことになった」と悔やむが、「みんなジェイデンを『お前はそんな選手じゃない』と励ましていた。ここから学んで、もっと良い選手になってくれればいい」と続ける。

「今後のキャリアで同じ状況を迎えることは何度もあるだろう。バスケをプレーするということは、試合の中でどれだけ自分をコントロールできるかなんだ。我々は若いチームとして、歯を食いしばって48分間を戦い、その中から学ばなければいけない。アイデンティティはそうやって作っていくものだ」

会見の最後に、ケーシーは「確かに彼はパニックになってミスをしたが、それで負けたわけじゃない」と強調した。「チームにも同じことを言ったんだが、まず試合の入り方に問題があった。第1クォーターは守備の意識が非常に悪くて、好き放題にやられて38失点している。試合序盤に激しく戦う術を学ばなければいけない。試合をどう締めるかは、その後の話だよ」