クリス・ミドルトン

汚名返上のポーティス「できる限り激しく戦った」

バックスはプレーオフのファーストラウンドでペイサーズと対戦している。1勝3敗で迎えた第5戦、若くて勢いに乗るペイサーズを迎えるホームゲームで、ふくらはぎを痛めているヤニス・アデトクンボは今回も欠場、さらにデイミアン・リラードがアキレス腱の痛みで欠場することになり、シリーズ敗退の危機に直面した。

第1クォーターに2桁のビハインドを背負うも、ラスト2分を無失点で切り抜けると、その後はバックスの優位が続いた。第2クォーターを30-17として逆転し、第3クォーター以降も時間の経過とともにリードを広げ、115-92で勝利した。指揮官ドック・リバースは言う。「選手たちを信じていたよ。みんな劣勢にあることを理解し、力を合わせて戦うしかないと分かっていた。誰もヒーローになろうとはしていなかった」

それは過小評価され、批判されてきた男たちの奮起だった。アデトクンボとともにこのチームで11年プレーしているクリス・ミドルトンは、NBA優勝を勝ち取った2021年以降はケガが増え、今シーズンもレギュラーシーズン27試合を欠場して存在感が薄くなりつつあったが、今回のプレーオフではアデトクンボの穴を埋めるべく鬼気迫るプレーを見せている。それが勝利に繋がらず1勝3敗と追い込まれたが、今回は出だしから飛ばしてスロースタートのバックスに勢いを与え、途中でファウルトラブルに苦しみながらも最後までチームを引っ張った。

フィールドゴール20本中9本成功の29得点、さらには12リバウンド5アシストも記録する活躍にミドルトンは「試合序盤から積極的にプレーして、チームに良い流れを作りたかった。何度かミスもあったけど、とにかくアグレッシブにプレーできたと思う」と言う。

「追い込まれていたけど、僕らは経験豊富だからチームの半分ぐらいはこの状況でコートに立ったことがある。何が必要かは分かっているし、簡単なことではないけど、全力を尽くしてホームに戻る道を切り開くだけだった。シュートが入るか入らないかはコントロールできないけど、どれだけ激しく戦うかは自分次第だから、そこに集中したんだ」

ボビー・ポーティスも見事なリベンジのパフォーマンスを見せた。闘志を前面に押し出すファイターである彼は、第4戦の第1クォーター途中にリバウンド争いの接触から相手選手を殴って退場となり、試合をぶち壊してしまった。チームに謝罪して復帰した彼は、39分の出場でミドルトンと並ぶゲームハイの29得点、そして10リバウンドと素晴らしい活躍を見せた。

ミドルトンは言う。「ポーティスは間違いを犯したけど、プレースタイルを変えてほしいとは思わない。高いレベルで戦うために必要なことだ。いつもは上手く折り合いを付けているけど、前回は少しやりすぎただけだよ」

バックスファンに愛されるポーティスは、汚名返上のパフォーマンスをこう振り返る。「試合をやっていると、個人対個人みたいな局面が出てくる。前回はそこに意識を持っていかれてしまった。今回はより広い視野で、チームから求められているプレーをすることだけを考えた。ゲームプランに従い、できる限り激しく戦ったんだ」

マリーク・ビーズリーは3ポイントシュート4本成功を含む18得点を記録。シューターとしての働きだけでなく、ミドルトンがファウルトラブルとなった時間帯はパスカル・シアカム相手のディフェンスで奮起するなど熱のこもったプレーを見せた。パトリック・ベバリーはいつものように相手を挑発しつつ、自分はクールにボールを動かして12アシストを記録している。膝の大ケガを乗り越えた35歳のダニーロ・ガリナーリは、2月にバックスに加入してから出場機会に恵まれなかったが、層が薄くなったチームを守備とリバウンドで支える役割を見いだし、バックス加入後では最長となる21分のプレーで勝利に貢献している。スタメンからベンチまで、多くの選手がステップアップし、力を合わせてもぎ取った1勝だった。

気になるのはアデトクンボの状態で、指揮官リバースは「何とも言えない」と回答を濁した。それでも今のバックスの選手たちは、アデトクンボがいなくても易々と負けるつもりはない、という気持ちで一致している。ミドルトンは言う。「ベンチで応援してくれるだけで、一緒に戦っている感覚を得られるからありがたいよ。でも、早く戻って来ることを願っている」