パトリック・ベバリー

シカゴ出身のベバリーはやる気十分「自分の街を誇りに思い、胸に刻む」

レイカーズからマジックにトレードされた後にバイアウトとなったパトリック・ベバリーは、ブルズと今シーズン終了までの契約を結んだ。ブルズはトニー・ブラッドリーを解雇してベバリーのためにロスターを空けている。

また、左膝のケガで今シーズン出場できていないロンゾ・ボールについて、今シーズンはプレーできない見込みだと発表した。ロンゾは昨年1月に戦線離脱し、すぐに手術を行った。最初の見込みでは昨シーズン後半に復帰できるはずだったが、練習の強度を上げると痛みが再発することを繰り返している。昨シーズン前半戦は新体制で目覚ましい躍進を見せたブルズだが、ロンゾが離脱すると失速。今シーズンもロンゾの復帰を待ちながら戦っていたが、26勝33敗と大きく負け越しており、プレーオフ進出に向けて窮地に追い込まれている。

ベバリーはシカゴの出身。自身のポッドキャスト番組でさっそくブルズ加入に言及し、「自分の街を誇りに思い、胸に刻む。他のチームでも頑張ってきたんだから、ブルズのためならどれだけ頑張れるか想像してほしい」と語っている。また、ウォリアーズからもオファーを受けたが、ブルズを率いるビリー・ドノバンのバスケを気に入っており、「ブルズのプレーオフ進出の力になりたい」と言う。

ロンゾのきらめくパスセンス、トランジションを作り出す司令塔としての能力はベバリーにはない。しかし、ディフェンスで身体を張り、相手を罵りながらリズムを狂わせ、チームを鼓舞できる。『チームに闘志を注入できる』ことこそが、ベバリーがブルズにもたらせる最大のメリットとなる。

ブルズには上手い選手は何人もいるが、強烈な個性でチームを引っ張るリーダーがいなかった。デマー・デローザンもザック・ラビーンも控え目だし、ニコラ・ブーチェビッチも饒舌なのはコート上だけ。ゴラン・ドラギッチは天性のリーダーだが、完成されたグループに新顔として加わった立場で、先発ではなくプレータイムが平均15.4分の『脇役』となれば、発言力は限られたものになる。

物静かな選手の多いブルズにとって、ベバリーの加入は『劇薬』だ。強力な効果があるが、副作用のリスクも大きい。似たような例がティンバーウルブズでのジミー・バトラーで、ポテンシャルを発揮できない若い選手たちの尻をバトラーは叩きまくり、自分と同じような勝利への意欲を求めたが、それが反発を生んでチームは空中分解した。

ただ、今のブルズはトレードデッドラインでチーム解体に舵を切ってもおかしくなかったほど状況が悪い。今の体制でシーズン最後まで戦える代わりに、ベバリーのような強烈な個性を受け入れ、ロンゾ抜きでも今シーズンに結果を出せというのが、経営陣からチームへのメッセージなのだろう。

選手の才能だけを見れば勝率5割を切るチームではない。ただ、物事が上手く運ばない時にメンタルの強さを発揮できず、士気が下がっていく。その状況を変える『劇薬』としてベバリーは迎え入れられた。デローザンは、ラビーンは、ブーチェビッチは、これにどう応えるのだろうか。