留学生ビッグマンを凌駕する活躍で東海大を日本一に導いた世代屈指のウイング
現在、日本代表はあと1週間に迫ったワールドカップ2023予選のWindow6に向けて強化合宿を行っている。帰化枠のジョシュ・ホーキンソン、東京五輪以来の代表活動となる渡邉飛勇に加え、今月上旬に行われた大学生以下の選手を対象にしたディベロップメントキャンプへの参加メンバーから4名が追加招集されている。
抜擢されたメンバーの一人である東海大2年の金近廉は、初めてとなるフル代表の活動への意気込みをこう語る。「先週のディベロップメントキャンプは自分としてもすごく良い手応えがあり、合宿が終わった時にトムさんから『来週も来てほしい』と言われました。初めてプロの選手と一緒にプレーする機会をもらって、今後のキャリアにとって良い経験になると思います。自分より戦術の理解度が高い選手がいっぱいいるので、まずはこのチームのオフェンスのシステムだったり、ディフェンスの考え方をしっかり理解して、うまく遂行することを目標にやっています」
金近といえば、昨年12月に行われたインカレで下級生ながら名門、東海大のエースとして攻守に渡って大暴れし、日本一の原動力となった。多くの強豪チームが有する留学生ビッグマンがいない東海大だが、196cmの金近がディフェンスでは持ち前の高い身体能力を生かしてインサイドアタックを止め、オフェンスではスピードのミスマッチを突いて効果的に外角シュートを決めるなど留学生を凌駕したことが優勝の大きな要因となった。
高確率の3ポイントシュートは大きな武器だが、金近の一番の魅力は日本人離れした身体能力にある。スピードに乗ったドライブからボースハンドで相手ディフェンスの上からダンクを叩き込むことができる稀有な存在だ。世界標準のスペックを備えた今の大学No.1選手である彼が、今回こうしてフル代表の合宿に参加するのはこれまでの活躍を見れば決して驚くべきことではない。
U19で対戦した強敵と再戦を「ワールドカップ、オリンピックでもう一度戦いたい」
代表で求められているプレーについて金近はこう語る。「自分の武器は3ポイントシュートです。ディベロップメントキャンプでも、3ポイントシュートがよく入っていて『シューターとしての役割を担ってほしい』と言われています。また『身長が高く、ディフェンスができて3ポイントが打てる選手が代表に足りない』と言われているので、そういう選手をイメージしながらこの合宿をやっています」
そして、Bリーグで活躍する国内トップレベルの選手たちとの練習はいろいろな学びがあり、刺激的な合宿を過ごせていると続ける。「今まで画面で見ていた人たちと一緒にプレーするだけですごく楽しいです。特に比江島(慎)さんだったり同じポジションの安藤周人選手は精度がすごく高くて、レベルの高いプレーをいつもしています。そういう部分でどんな練習でも気にしながら見ていたり、真似してみたりして、皆さんの良いところを盗んでいきたいなと思います」
激しいポジション争いを勝ち残り、半年後のワールドカップ本大会出場への道が拓けてきたことについて「自分よりも年の離れた選手とプレーしている中で、あまり想像がつかないです」と語る金近だが、一方で世界への意識はしっかりある。
「大学1年の夏にU19ワールドカップ2021に出場し、自分と同年代の世界レベルの選手たちと戦うことで、彼らとワールドカップ、オリンピックでもう一度戦いたいと思うようになりました。カナダ戦でマッチアップしたベネディクト・マサリンは、NBAドラフトで上位指名を受けてペイサーズに入り、(新人王候補の)プレーを見せています。彼のように活躍している選手を見る度に、また世界の舞台に立ちたい気持ちになります」
今の金近は、合宿でどれだけ爪痕を残せるかに集中している。「まだ先のことを考えられる余裕はないです。まずはこの合宿でとにかくアピールして、これからの代表活動や自分のキャリアに繋げていければと思います」
ただ、開催国で本大会出場が確定している日本にとってこのWindow6はトレーニングマッチとなる。だからこそ、次代の日本代表で中核を担えるポテンシャルの持ち主である金近に国際大会の経験を少しでも積ませて欲しいと思う。