ベン・シモンズ

デュラントとカイリーが去り、シモンズはベンチスタートに回る

ケビン・デュラントとカイリー・アービングが去った直後の試合で、ベン・シモンズのプレーからは「自分がチームを引っ張る」という気概が感じられた。これまでよりもボールを持つ機会が増え、それに比例するかのように積極性も増したように見えた。

だが、それは長くは続かなかった。ネッツのヘッドコーチ、ジャック・ボーンはデュラントとカイリーのいなくなったチームで常にフレッシュな選手をコートに送り出すローテーション制を試している。これまでデュラントを中心に一部の主力選手を重用していたが、それとは逆に多くの選手に出場機会を与え、プレータイムの偏りを減らしている。ただ、その中でプレータイムを伸ばしているのは、トレードデッドラインで加わった新戦力たちだ。

これはシモンズの「自分がチームを引っ張る」という意欲に逆行するもの。プレー内容が批判されることはあっても多くの試合で先発を任されていたが、直近の4試合はベンチスタートで、出場時間は20分、16分、13分、20分と減っている。プレータイムがこれだけ少ないとスタッツも伸びない。

もちろん彼自身にも問題はある。シモンズはディフェンスができ、ボールをプッシュしてチャンスを作り出せるが、シュートへの苦手意識が極端に強い。デュラントとカイリーがいれば、お互いに役割を補完できたのだが、状況が変わった。得意なプレーでチームを引っ張るだけでは足りず、シュートを打ち、リムまで攻めてフリースローでも得点してほしいところだが、そこまではいっていない。結果、これまで彼が主にプレーしていたパワーフォワードのポジションには、ドリアン・フィニー・スミスが入り、センターのニコラス・クラクストンの控えに。この立場もシモンズにとっては不本意なものだろう。

同じような境遇の選手は他にもいる。前半戦は高確率の3ポイントシューターとして大活躍した渡邊雄太もプレータイムを減らしており、先のニックス戦では試合終盤のガベージタイムに4分出場しただけ。ヒート戦では出番がなかった。ネッツに来て地道に積み重ねた信頼を、チーム再編が原因で失ってしまったように見える。

ただ、シモンズの場合はより深刻だ。直近のニックス戦では13分の出場でフィールドゴールを2本しか試みずに2得点に終わった。ヒート戦では20分出場したが、同じくフィールドゴール2本を試みただけで2得点。これでは「チームで一番の高級取りの元オールスター選手が……」という失望の目を向けられても仕方ない。セブンティシクサーズで戦犯扱いをされてネッツに流れてきたシモンズにとっては、こういう目線は耐えられないものだ。

シモンズは言う。「今シーズンは常に何もかもが変化していて、何が起きているのかを把握するだけでも大変だ。その中でリズムを見いださなきゃいけない。僕にとってベンチスタートは今までとは違う経験だけど、チームが勝つために必要なことは何でもやるつもりでいる」

ネッツはスター選手2人を失った代わりに実力と経験を持つプレーヤーを多数加えた。ただ、個々の実力はあってもそれをチームとして機能させるための最適解を出すのは簡単ではないし、その過程ではシモンズのように苦しむ選手も出てくる。

「変化は大きいけど、良いチームになれると信じている」とシモンズは言う。変化するネッツの中で、シモンズは正念場を迎えている。